今日もめくるめかない日

小説

取るに足らないものの連続(旅する練習/乗代雄介)

「小説」という言葉にはもともと、取るに足らないものといった意味があるらしいですが、そんな取るに足らない小さな事象でも、鳥みたいに飛び立てるような気持ちにさせてくれるのがまた、小説なのだと思います。 bookclub.kodansha.co.jp 旅する練習 (講談社…

引き続き雨

9時起床。 三連休!今日は友人に会う予定があるので朝から少しわくわくしていたけれど、待ち合わせ時間を確認するためにLINEを遡ったら、なんと約束していたのは明日だった。仕事は出張とか外に出る用事もない完全内勤だし、人と会う予定もめったに入らない…

if/when(私が鳥のときは/平戸萌)

「事情」というのは人を慮らせる。事情によっていつもより優しくできたり、理解できないことに納得できたり、本来許せないことを許せたりする。でもそれは、その人本人のためでなく、事情のために優しくしているとも言えるとも思う。 家庭に問題がある、家が…

源氏物語を読んでる(玉鬘~胡蝶)

源氏物語も中巻に突入です! 今回は玉鬘~胡蝶。光源氏もぼちぼち昔のように無条件で称えられ奉られる……という感じではなくなってきました。玉鬘がんばれ……。 玉鬘 初音 胡蝶 mrsk-ntk.hatenablog.com 玉鬘 夕顔の名前が久しぶりに出てきた…! ちょうど先週…

2023年ベスト約10冊

今年は京都の下鴨古本まつりに行けたことがよかったです ついに2023年もあとわずか、私このあいだ「2022年もあとわずか」と書いたばかりのような、ということも去年書いた気がする。あっというまだと思っていても、たしかに一日一日を過ごしてきました。今年…

源氏物語を読んでる(薄雲~少女)

ついに源氏物語上巻を読み終えました! 訳者あとがきにも「読みやすさを優先した」とあるとおり、たしかに読みやすかった(とはいえ私は本作で源氏物語にはじめて挑戦したので比較対象はないのですが……)。 登場人物が多いのと相関図もややこしいのでメモは…

源氏物語を読んでる(蓬生~松風)

だいぶ間があいてしまいました。今年一年で上中下巻を読む目標だった源氏物語、なんとかぎりぎり上巻を読み終えるペースです。目標や計画とはなんとその通りにいかないことよ。 というわけで蓬生から松風までを読みました。 蓬生 関屋 絵合 松風 蓬生 光源氏…

サンゾウは私たちを裏切らない(世紀の善人/石田夏穂)

たまに実家に帰って親戚の集まりなんかに出席すると、知らないじいさんに「子供いないの?子供はイイゾ~こさえろこさえろ」と大声で言われることがある。恥も外聞もなく堂々とした口調で言えるじいさんを前にして、怒りはわいてこない。むしろ安心するよう…

奇病庭園/川野芽生

いまどんな本を読んでるの、と聞かれて「奇病庭園」とこたえると、たいてい相手は「?」という顔をする。「きびょうていえん」、音で聞くだけではなかなか変換しづらいのかもしれない。 けれども奇病庭園、つい口にしたくなるタイトル。装丁もなにやら不穏。…

グッドガールを応援したい/自由研究シリーズが最高のミステリ小説だった

普段海外の小説はあまり手に取ることがないのですが、今回夢中になって読んだ作品がありました。話題作なのでご存じの方も多いと思いますが、そうです「自由研究シリーズ」です! そもそもミステリ小説すら全然読まない私ですが、このシリーズはほんと、もう…

歩きスマホとそれをよけてあげる人(いい子のあくび/高瀬隼子)

「心」は物体ではないけれど、たしかにかたちがあると思う。それも決まったかたちじゃなくて、接する人によって変わる。それはつまり社会で生きていくための処世術なんだけど、あれ、じゃあ「本当の私」ってなんでしたっけ……? とかときどきふと考えちゃう人…

源氏物語を読んでる(須磨~澪標)

引き続き源氏物語を読んでいます! 七月になってもまだ上巻を読み終わっていないのですが本当に今年中に読み終わるのでしょうか。 須磨 官爵をはく奪され、光源氏須磨へ。かつて自分が「このようなわびしい家に住んでいるのはどんな人だろう」などと好き勝手…

今まで書いた本の感想まとめ(2021)

夏ですね このブログをはじめて二年も経ちました。投稿数90、飽きっぽい私にしてはかなり続いているほうです。そしてありがたいことに読者の方もなんと99人・・・!(すごい!ありがとうございます!!) 一度書いたら年に一度軽くまとめるくらいで昔の記事…

読んだ本(2023年上半期)

月面文字翻刻一例/川野芽生 君のクイズ/小川哲 黄色い家/川上未映子 ディスタンス/湯浅真尋 うるさいこの音の全部/高瀬隼子 自由研究には向かない殺人/ホリー・ジャクソン(訳 服部京子) 花に埋もれる/彩瀬まる 化け者心中/蝉谷めぐ実 回樹/斜線堂…

源氏物語を読んでる(葵~花散里)

引き続き源氏物語を読んでます。 葵 賢木 花散里 葵 「花宴」から二年が経っていた。私は今のところ光源氏の正妻、葵の上をいちばん心配しているので、懐妊!おめでたい。というかむしろ結婚してかなり時間がたつけど、けっこう遅めだよね…それだけ光源氏が…

源氏物語を読んでる(若紫〜花宴)

引き続き源氏物語を読んでます! mrsk-ntk.hatenablog.com 桐壺~夕顔 若紫 この帖はいろいろと大丈夫なのか光源氏……となりました。藤壺の面影があるからといって強引に10歳の女の子を家に招こうとするし(藤壺の兄の子だから似てるところはたしかにあったん…

源氏物語を読んでる(桐壺~夕顔)

桐壺 帚木 空蝉 夕顔 その名を知ってはいるものの、実はしっかりと読んだことがない源氏物語。光源氏が色男で四方八方からもてるというふわんとした知識しかなく、結局最後はどうなるの、どんな人が出てくるの、どんな歌を詠んでるの、なにも知らないのでこ…

1~3月のまとめ

椿が落ちて桜が散って、ツツジのつぼみがひらきはじめてもう四月、みなさまいかがおすごしですか。本日は夜から大雨、春の嵐というかんじ。帰りのバスで雨粒を眺めながらこの文章を書いています。 ほんとうは昨晩のうちに書いてしまおうと思ったのだけど、金…

回樹/斜線堂有紀

小説に100%共感は求めていないけれど、やっぱり「この気持ち…知っている…!」と思い当たる場面があれば悶絶必至、一気にその作品が好きになる。そして前の記事でも語ったけれど、私は植物×人間が好き、ふつうの生活にSFなスパイスが降りかかっているのが好…

花に埋もれる/彩瀬まる

ハイファンタジーはあまり読んでこなかったジャンルだけれど、ローファンタジーは好きだ。舞台は現代で、人間の生活が描かれていて、でも私たちの暮らしとは少し違う非日常が溶け込んでいるというような。 さらに言うと、植物×人間が好き。これもう大好物な…

2022年の読書

今年読んだ本はこんなかんじ、たくさん読めましたが相変わらず新刊はあまり追えていません。次から次へとおもしろい作品がうまれていくこの世、もはや怖い。 上半期にもベストをまとめましたが今年一年のものをあらためて。だいぶ絞ったよ! 読んだ順です。 …

迎え撃つ(フィールダー/小谷田奈月)

先日こんな話を聞いた。 最近は小学生のうちからSDGsについて勉強するための授業が設けられているらしいのだが、ある生徒が目標を達成するなら人間がいなくなればいいという答えを出したということ。わたしはこの話を聞いて、極端だなあと少し笑ったあとに、…

神保町でひっそりと感動

10月29日(土)きもちのいい秋晴れ、神保町でブックフェスティバル、神田古本まつりが開催されているということで意気揚々と出かけてきた! はじめて行ったのですが予想以上にすごい人で、老若男女たくさんの本読みたちが集結しているのか……と思うとなんかう…

植物少女/朝比奈秋

小説を読んでいると、ときどき、本当のことが書かれているな、と思う作品に出会う。小説は基本的にフィクションであって、なかには事実をもとにしたものもあるけれど、事実がどうとか実際に起こったことを本当と言っているのではなく、ご都合的なことがなく…

無垢なる花たちのためのユートピア/川野芽生

今年はまだ三か月も残っていますが、読んだ瞬間に私の今年のベスト3に入った小説がありました。感想をうまく書けるか自信がなかったのでブログでは紹介してこなかったのですが、やっぱり多くの人に読んでほしいという気持ちが日に日に増していくので、書く…

蹴りたい背中/綿矢りさ

クラスで浮いた存在にはなりたくないけれど、くだらない慣れ合いはしたくない。侮られたくない。見下したい。わかった気でいたい。わかられたくない。 学生のころ感じていたことを驚くほどの高解像度で思い出してしまうのが綿矢りささんの「蹴りたい背中」で…

SFのよみかた

今週のお題「SFといえば」 SF作品と呼ばれるものを、そういえば私はいままであまり触れてこなかった。 SFといえば、エヌ氏やエフ氏が出てくるもの、キツネが宇宙に旅だったりするもの、人類がコールドスリープを体験するもの、ロボットと人類が友情を築いた…

ほんものの(ペーパー・リリイ/佐原ひかり)

ボール紙の海に浮かぶ紙の月でも私を信じていれば本物のお月様 作り物の木と絵に描いた空でも私を信じてくれたら本物になる 映画「ペーパー・ムーン」の冒頭で流れる曲の歌詞の一部。 eiga.com 映画をあまりみてこない人生だったけれど、この「ペーパー・ム…

読んだ本(2022年上半期)

なんと梅雨が明けたらしいです(私は関東住まい)。毎日あっつい、あつすぎる。夏のはじまりはいつだって美しくきらきら輝いているイメージですが、実際外を歩いていると、まぶしいものを感じている場合じゃないよね。夏の写真とか絵とかみてるだけ、文を読…

おいしいごはんが食べられますように/高瀬隼子

職場での暗黙のルールというのはいつのまにかできている。「こうしよう」とだれかが口にしたことはないはずなのに、いろいろなことが「そういうふう」になっている。「そういうもの」だと思わなきゃいけないことになっている。 どんな職種についても思う。仕…