今日もめくるめかない日

10年前は恋愛するしかやることなかった

 10年前、わたしは22歳だった。こうやって書いてみてびっくりする。わたし22歳だったんだ。
 当時の自分がなにを思ってどんなふうに生活していたの思い出すために、Facebookをさかのぼったら2012年が最初の投稿だった。でも本当はFacebookを見なくてもわかっている。10年前のわたしは恋愛しなくちゃ死ぬ病にでもかかっていたのかというくらい、恋愛したくてしかたがなかった。
 恋愛はたのしかった。そらもうべらぼうにたのしかった。当時は居酒屋でバイトしているちゃらんぽらんなフリーターであり、近くの店と交流があったりなかったり、そこから歳の近い人と出会えば恋愛沼にすぐはまっていた。しかしなぜかダメンズウォーカーの気があったわたし、沼に沈む相手は彼女あり、だったり、付き合おうという決定的なひとことを絶対に口にしない人だったり、酒が入ったら暴力的になる人だったり、金があまりにもない人(酒にすべてつぎこむ)だったり、書いててかなしくなってきたが、ザ・難!な人ばかりだった。しかしなぜだろう、わたしは夢中だった。相手のことを好きだと思っていたし、ザ・難!な人を守ってやりたいと思える自分も好きだったし(…)、恋愛しているという状況そのものが好きだった。思い返すとおそろしい、隙あらばポエミーメール送ってしまったり健気女を演じたり。ほかにやることなかったんだろう。
 そんなふうに恋愛しなくちゃ死ぬ病だったわたしが、いつからか恋愛しなくても死ななくなった。なぜこの病気が治ったのかよくわからないけど、たぶんうまくいかない恋愛に疲れすぎてあきらめることが身についたのだと思う。どうせうまくいかないし、どうせふられるんだしと考えて(自分にももちろん非はあったが実際に28歳くらいまでうまくいかなかった。oh……)、もう自分のタイプを信じないと決めた。幸いなことに(?)仕事が忙しくなって、恋愛どころではないサイクルに突入したのもあって、恋愛脳から解放された。

 

 恋愛だけではなく、この10年でいろんなことをあきらめるようになってきたなとは思う。あきらめるというか、わかった気になることが増えたというほうが近いのか。熱をあげてもうまくいかないことのほうが多い、努力は実らないことのほうが多い、夢はかなわないことのほうが多い。でも、大抵のことは「そういうものだ」と思うようになった。大人になったといえば聞こえはいいのかもしれないけど、10年前の、うまくいかないことをおそれずにがむしゃらにポエミーメールとか送っちゃう自分を少しうらやましいとも思う(今送れと言われたらそれは無理なんだけどさ)。

 当時は今より自信があったし、自分のことが大好きだったのだと思う。Facebookを見ていたら、まったく美脚とはいえないのにすごく足出てるスカートはいてたりしてるし。めちゃくちゃキメ顔でプリクラ撮ってるし。「ケータイ紛失しちゃったので用事ある人メッセンジャーください」とか投稿してるし(友達少ないので頻繁に連絡なんてほぼないのに。その数時間後に「ケータイ新しく買いました!」とか投稿してるし)。でもたぶん、そういうのがたのしかったんだろうな。どうせうまくいかないから、恥をかくのがいやだから、などという理由をつけてドライぶっているのは、たしかにあんまりたのしくない。
 ただだからといって、今すぐ当時の自分みたいにはっちゃけよう!とかさすがに思えない。歳をかさねるごとに自分の行動に自信を持てなくなくなってきている、あるいは慎重になってきている。やっぱりそこは、わたしの変化した部分なんだろう。だけどこの変化を嘆くのではなくて、変化した自分につきあって「たのしい」の落としどころをまた自分で見つけていくことで、30代の基盤みたいなものができていくのかもしれない。こんなことを考えているなんて、恋愛のことしか頭になかった10年前の自分は思いもよらないだろう。

 

 それにしても頻繁に投稿していたわけではないけれど、Facebookはなかなか魔境である。自分のタイムラインだけみても、「なんだこれ」という投稿がちらほら。恋愛に疲れ切っていたわたしに、友人から「誕生日おめでとう!マジになるって切ないね」とかメッセージが届いてたり(余計なお世話だ)、なかには実の母親から「地元で街コンが開催されるって!いかが?」というシェア情報がわたしのタイムラインに反映されていたり。いかが?じゃねえわ、マジで余計なお世話すぎる(しかも2回もいかが?投稿があった)。ブルーノートに行ったり恵比寿で肉食べていたりと(自分基準の)オシャ活してたり(そんなところへわざわざ出かけるなんて信じられない。この10年でインドアにも拍車がかかった)。唐突に塗り絵を披露してたり。27歳のことを「マジサー」とかいっていたり(ぜんぜんマジじゃねえわ)。
 10年前、一緒に写真を撮っている友達と、今はもうほとんど会わないし連絡もとらないけれど、ひとりふたり今でもなんとなく会う人もいる。とりまく環境、考え方など10年で別人のようになったわたしたちだけど、10年前から変わらず友達のままでいることもできているんだなあ、変わらないこともあるのだなあとしみじみ。当時の自分が恋愛だけしていたわけじゃなかったみたいで少し安心する。そしてそんな存在がいる今の自分のことも、当時ほどじゃないけど、好きだなあなんて思ったりもするのである。

 

f:id:mrsk_ntk:20211111094037j:image10年前、台湾に行っていたらしい。旅人風に撮ってとかリクエストしたのを覚えてる。髪傷みまくりの旅人。

 

f:id:mrsk_ntk:20211111094919j:imageあと10年前のインカメの画質がいとしい。ピースの仕方なんなんだよ。

 

 

 

はてなブログ10周年特別お題「10年で変わったこと・変わらなかったこと

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