2021年も残すところあと二週間ほど、今年は本当にどこにも行かず、仕事をするか家で寝てるか本を読んでいるか、という感じだった。なのでここ数年のあいだでは、いちばん読書量が多い年だったように思う。そんなわけなので、今年読んでとてもよかった本をまとめました(ほとんど小説です)。基本わたしは読んだ本に対して「すげー!おもしれー!」と感じるし、話がもし合わなくても「この一節がちょう好き…」となったりして、そうそう「つまらない」と思うことはないんですが、そのなかでもとくによかったなと思う作品たちです。読んだ順です。
- 少年アリス・改造版 少年アリス/長野まゆみ
- 文藝2021春号
- コンジュジ/木崎みつ子
- レースの村/片島麦子
- スモールワールズ/一穂ミチ
- ブラザーズ・ブラジャー/佐原ひかり
- クララとお日さま/カズオ・イシグロ
- kaze no tanbun 夕暮れの草の冠
- みじかい髪も長い髪も炎/平岡直子
- 恋シタイヨウ系/雪舟えま
- 手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ)/穂村弘
- アンソーシャル ディスタンス/金原ひとみ
- 偶然の聖地/宮内悠介
- 同志少女よ、敵を撃て/逢坂冬馬
- 凍土二人行黒スープ付き/雪舟えま
少年アリス・改造版 少年アリス/長野まゆみ
続けて二冊読み、どちらもほんとう~~~~によかった。作品内の言葉づかい(本当に言葉づかいとしか言えない…)は、改造前のほうが好きなんですが(漢字の使い方とか、読ませ方とか、組み合わせ方とか、とにかく最高だった)、全体的な話の内容は改造版のほうが好きです。アリスと蜜蜂をより身近に感じられた気がします。蜜蜂は今年のトップ3に入るいとしい男の子です。
文藝2021春号
文藝は今のところ毎号買っているのですが、何を隠そう「ディストピア」というものが大好物なので、ディストピア特集であるこの号はたいへん楽しみました。そして特集関係なく、掲載作品どれもほんとうに、ぜんぶおもしろかった……。かなり豪華な号でした。残念ながら売り切れのようです(版元においては残念じゃないですね)。ディストピアアンソロジーとか出してほしいな……。
コンジュジ/木崎みつ子
何回か紹介している気もしますが何度でも紹介する……。読んだときの衝撃たるや、しんどい場面の連続に息切れを起こしそうになるのに、読み進める手がまったく止まらず。帯にもありますがラストシーンが悲しくうつくしい、このうつくしさはとても残酷に感じます。読み返したいときは(つらくなるので)すごく元気なときにしようと決めています。ちなみにわたしは川上未映子さんが大好きなのですが、こちらの対談を読んでこの本を買おうと決めました。
レースの村/片島麦子
一行読んだらもうとりこ、日常と隣り合わせにある不穏さを感じさせてくれると思っていたら、ささやかに幸福も感じられる短編集。「幽霊番」がとくに好きで、けっこうぞくぞくと背筋が凍る系で、とくに知らない田舎のあの独特な雰囲気が、文をとおしてめちゃくちゃに伝わってきて、不気味さがくせになります。こちらの作品は前に感想を書きました。
スモールワールズ/一穂ミチ
もはや説明不要の短編集ですね。本当にどの話もおもしろかったし「ヒョエー!ウワー!」の連続だった。なかでもわたしは「愛を適量」が好きです。許されないところ(だけど少しだけ許している気がするところ)がよかった。あとは多くの人がそうだと思うのですが「ピクニック」で度肝を抜かれた。あと「ネオンテトラ」でも度肝どころか魂抜かれた。「魔王の帰還」もいとしいし、「花うた」「式日」は胸がつまった。全部いいね。
ブラザーズ・ブラジャー/佐原ひかり
この作品についてはこの記事で語りつくしたと思っていたけれど、まだまだぜんぜん話せるね……。さわやかな十代の青春小説、けれど大人こそこの作品を読んだらいろんなことに対して他人事でいられないと思う。わかっていたつもりのことに、ぶん殴られる気持ちです。人を推し量ろうとしたり、推し量られたりするときにその実ぜんぜん量りきれてないことはたくさんあるよなとあらためて。むりに推し量ることも必要ないんだけれど。あと晴彦は今年のトップ3に入るいとしい男の子です(二人目)。
クララとお日さま/カズオ・イシグロ
この作品のことを思い出すとたちまちせつな愛しい気持ちになります。クララはほんとうに、愛すべき存在……。クララのことはずっと忘れたくない……。もしこれから読むというひと、今からはじめてクララに会えるのがうらやましいです。何度読み返しても色あせない作品だとは思うけれど、やっぱりはじめて出会うときの気持ちは代えがたいものだと思うので、ぜひぜひ。こちらで感想書きました。
kaze no tanbun 夕暮れの草の冠
どの短文もたいへんたのしめて、とても上質な時間を過ごせる一冊! 本棚にあるだけでとくべつに感じるこの装丁もいやはや……見惚れる。ずっとさわっていられるし眺めていられる。そしてとにかく「ペリカン」との出会い……私にとってちょっと忘れられない出会いです。こちらで感想書きました。
みじかい髪も長い髪も炎/平岡直子
歌集。切なくやさしいかんじがとてもよかった……。
手をつなげば一羽の鳥になることも知らずに冬の散歩だなんて
天の川はうちに作れる畳の上に一円玉を敷き詰めるだけ
絵葉書の菖蒲園にも夜があり菖蒲園にも一月がある
めをとじて この瞬間に死んでいく人がいるのを嘘だと思う
「手をつなげば一羽の鳥になる」……!? 読んだとき「ほ、ほんとうだ……!」と気づいて興奮したし、一円玉を敷き詰めるだけで天の川をつくれるっていうのも「ほ、ほんとうだ……!」だし、絵葉書の菖蒲園にも夜があり一月がありって、「ほ、ほんとうだ……」だし、この瞬間に死んでいく人がいるのを嘘だと思いたい。繰り返してるだけじゃないかと思われそうですが、だって、それ以外に言えない。この歌集を読むまで知らなかったことがたくさんあった。
恋シタイヨウ系/雪舟えま
今年はわたし、雪舟イヤーだったので、出会えたことに心の底から感謝しているので……本当にどの雪舟作品を読んでも「最高……好き……」しか出てこないので……ちなみに今年のトップ3に入るいとしい男の子の最後の二人がミドリとタテです。最大限の感謝と愛と読めた喜びを詰めまくった感想。
手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ)/穂村弘
読んでいるときは、ちょっとなにが起きたのかわからなくなる歌集。な、何事……!?というかんじです。なに言ってるんだ……と思った人は、読んだらきっとわかるから……まみは上記で紹介した雪舟えまさんがモデルになっているとのことですが、そのまみが穂村弘さんにのりうつっているという、なんかもうとにかく衝撃たるや。
恋人の恋人の恋人の恋人の恋人の恋人の死
残酷に恋が終わって、世界ではつけまつげの需要がまたひとつ
早く速く生きてるうちに愛という言葉を使ってみたい、焦るわ
午前四時半の私を抱きしめてくれるドーナツショップがないの
夜が宇宙とつながりやすいことをさしひいても途方にくれすぎるわね
よすぎて圧倒的感謝しか出てこない……。
アンソーシャル ディスタンス/金原ひとみ
きた、きた~~~!!これからもずっとついていくぜ~~~!!!と思わせてくれる作品集。短編集で、どの作品も最後の一文にやられます。断言します、やられます。感想ここで書きました(けっこう長い)。
偶然の聖地/宮内悠介
べらぼうにおもしろいエンターテイメント冒険小説。どこを切り取っても(切り取る必要ないんだけど)おもしろい、こんなに「おもしろい」という言葉がぴったりな小説ってそうそうないと思います。感想書きました。
同志少女よ、敵を撃て/逢坂冬馬
こちらももはや説明不要ですね……。これから読まれる方も多いと思いますが、なにもかもに撃ち抜かれてください。わたしはアヤが好きです。アヤが好きです。二回言う。本当は何十回でも言いたい。あの場面の衝撃、読んで時間がたっていますがいまだに頭に残っています。個人的にはラストシーンよりあのシーンがいちばんの衝撃(もちろんラストシーンもものすごい衝撃だった)。寝食忘れて読みふけることのできる一冊。怒涛の展開に息切れするし(でも立ち止まれない!)、かなしくつらい場面ではぼろぼろ涙がこぼれて止まらなかった。
凍土二人行黒スープ付き/雪舟えま
繰り返しますがわたし今年は雪舟イヤーでしたので……。なんですかこの愛しさを詰めまくった作品たち……。雪舟作品の好きなところは、(わたしにとって)「サムイ会話」というのがなくて、すごく自然というか、SFなんだけれど日常と地続きで、だからいろんなことを身近に感じられたり、でもロマンチックな夢も見れたり、とにかく最高です。好き。
今年はこんなかんじでした、冊数主義ではぜんぜんないですが、アプリによると130冊も読んでいた! 読んだね!紹介してもらった本もたくさんありました、ありがとうございました。