今日もめくるめかない日

「鎌倉殿の13人」めっちゃおもしろくないか

 大河ドラマ「鎌倉殿の13人」めっちゃおもしろくないか。ここでわざわざ言わなくても、きっといろんな人が「おもしろいよ」って思っているはずなんだけど言いたい、めっちゃおもしろい。

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 そもそもわたしはドラマを観続けるのがにがてなのだ。何曜日の何時に放送しているのかすぐ忘れてしまうし、家に帰ってくる時間も決まっていないし、22時すぎに帰宅なんてこともざらだし、一話でも見逃したらどうでもよくなるし、いまどき見逃し配信だってあるだろうと思われるかもしれないけど、見逃し配信してまで夢中になれるドラマがそもそもないのだ。
 そんなドラマに興味ないわたしが、なんかめちゃくちゃはまってしまった鎌倉殿の13人……。大河ドラマをしっかり観るのだって実ははじめてなのだ。歴史にも興味なかったし(歴史を勉強せねばなという思いだけはあった)。
 むかし「いいくにつくろう鎌倉幕府」を勉強したときは、こんなおもしろい背景があったなんて知らずに記号的に年号をおぼえただけだし(今は1192年じゃない説も出ているようです)、教科書に載っている昔の人たちはみんな同じ顔にみえるし、ぶっちゃけ頼朝がなにしたひとなのかよく知らなかったし、北条政子はたしかに記憶にあるけど、その弟の義時のことなんてすっかり忘れていたよ。

 そんなわたしでもしっかりはまったのである。三谷幸喜さんの脚本ということもあったが(三谷映画好きなので…)、最初は本当になんとなく、カジュアルに歴史を学べたらいいなーくらいの気持ちだった。

 そして放送がはじまる。オープニングかっこよくね? エバン・コール……。はじめて知ったその名前、インタビューを読むと

 

「原始的な人間の本能を感じるような曲を」

特集 インタビュー 音楽 エバン・コールさんインタビュー ~原始的な人間の本能を感じるような曲を~ | NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」


 かっけえ……。たしかに毎回わたしはこのオープニングから人間たちを感じている……その時代を生き、倒れ、乗り越え、つないでいく者たちの、激動を感じている……。「いざ」(三浦義村 山本耕史)……。

 序盤はコミカル風味で、主人公北条義時小栗旬)が兄北条宗時片岡愛之助)に振り回されたり、源頼朝大泉洋)に振り回されたり、幼馴染み後の妻の八重(新垣結衣)にちょっと引くレベルで思いを寄せたり、北条政子小池栄子)の佐殿へのおもしろアピールだったり、北条時政坂東彌十郎)のおとぼけぶりだったり(水鳥のシーンめちゃ笑った)、もちろん戦のシーンもあるけれどわりとふふふと落ち着いた気持ちで純粋におもしろくみていた。
 しかし最初の悲しみはわりと早く起きる。義時の兄、宗時があっけなく死……。「おれの夢は、北条を大きくすることさ!」とおもいきりフラグをたて、だれも知らぬうちに(戦でなく!)討たれてしまう。あのとき「観音様の像を持ってこいや」とわがままを言った頼朝をわたしはまだゆるしていない。あそこから館に帰るの大変だってわかんないのか!?
 兄上の悲しみを引きずりながらも、そのうちザ・男前な上総広常(佐藤浩市)が出てきて、うひょ~~なんだこのかっこいいとかわいいがあわさった最高な坂東武者は~~~とテンション爆上がり、もうずっと上総介をみていたい、もうあんたが兄貴、鎌倉殿でいい……と思っていたらとんでもねーサイコパスキャラの源義経菅田将暉)が奥州から合流、こりゃ~おもしろくなってきましたぜ、へへへへ……と毎週日曜日20時から20時45分を過ごしていたら、なんか知らないうちに暗雲がたちこめてきた……。 
 いや、暗雲はきっと最初からたちこめていたのだ、それはもう上総介殿が出てきたときからさだめられていたことなのだ……。だってこれは史実のこと、変えようがないこと、上総介殿の二次創作とかしないかぎり……。頼朝と上総介殿が親友になってそれを義時がほっこりながめているとか、そういうほんわか創作ください。

 

 頼朝の策略によって殺されてしまう上総介。そのロスは視聴者全員に重くのしかかり、Twitterのトレンドには放送日から4~5日たっても「上総介を偲ぶ会」とか「上総介ロス」とかいうワードがずっとあがっていた。どんだけみんな上総介好きなんだい……と思いながら全国津々浦々にこんなにも悲しみを共有できる仲間がいるのは心強い。わたしたちみんな上総介の家人だよ!

 上総介が殺された翌週、エバン・コールの最高のオープニングが流れるが、クレジットには上総広常(回想)……か、回想~~~~~~~~~~(泣)。オープニングでのクレジット順というのもひそかに興奮しているのですが、上総介(佐藤浩市)はわりと後ろのほうに名前が出ていたのですね、その順番が大御所感あったんだけれども、(回想)のときはさくっと前半に登場、今まで上総介のクレジットが出ていたところには比企能員佐藤二朗)。
 わたしは佐藤二朗さんも好きだけど、好きだけども~~~~~~~上総介殿~~~~~~のロスのせいで複雑な気持ちでオープニングを聴いたのである。
 ちなみに最近、そのあたりのクレジットは善児(梶原善)が登場していた。この善児というのは視聴者にもっとも恐れらているといっても過言ではない男、静かなる暗殺者、何を隠そう宗時を殺したのもこの男なのだ……。この男、一体どんな終わりを遂げるのか、終わりは描かれるのか、頼朝の死に際より気になるところでもある。

 

 そして上総介ロスも癒えないうちに、毎週毎週、人が死ぬ鎌倉殿の13人。しかも義のある人が殺されてゆく……。時代を考えれば人情や義に厚い人はたしかに生き残れないのかもしれない。ずるがしこくて、つねに人を疑って「自分が殺される前に殺す」という気持ちで生きていて、「こいつに逆らったらやばい」と思わせないと、生き残れないのかもしれない。でも、でもさァ~~~~~いい人が生き残ったってよかったじゃん……木曽義仲青木崇高)はものすごくいいやつだったよ……最後まで頼朝と戦わないようにしていたよ……。息子の義高(市川染五郎)だってそんな父を信じていた……父が討たれ自分も殺されるかもしれないというときに北条家が義高を逃がそうとする場面で、「自分が生きていたら必ず復讐をする」と迷いなき眼で言い放った義高。人質として鎌倉へおくられても、父のことを信じていたし尊敬していたのだ……。そのくらい、義の人だったのだ義仲は。なんて名は体をあらわす親子だよ。
 平家を滅ぼそうとしたのは、平和な世をつくるためだったんじゃないの……? 自分の家、名を全国にとどろかせるっていうのは、その時代疑うことなくだれもがみつめていた目標なのかもしれないけど、だれかひとりでも信じられる人がいるっていうのも、悪くないんだぞ頼朝……実の弟ですら信じられなかった頼朝……。

 

 実の弟、義経である……。義経のことはきっと多くの人があるイメージを持っていて、それは「悲劇の武将」という感じだと思うんだけど、登場シーンから悲劇とは遠くかけ離れていた義経
 いきなり猟師をだまし討ちなどしたり、気まぐれに寄り道したり、声めちゃでかかったり、食べ方がさつだったり、自分の意見が否定されるとむきになったり、めちゃくちゃな攻め方(しかし理に適っている)を提案したり、文字通りの暴れん坊将軍か?という感じなんだけれども、とにかく兄頼朝のために戦うという実はだれよりピュアな義経。だれも信じられなかった頼朝に対し、人を信じすぎた義経。な、泣ける……。そして梶原景時中村獅童)とのいろんな応酬。
 義経は景時を煽ったりもしたし、景時は戦の才がある義経に嫉妬したり複雑な思いを抱いたりもしていたけど、でも二人は戦をする互いのことを、認め合っていたのだ……。義経が奥州で追い詰められ、「自分だったらこう鎌倉を攻める」と義時にたのしそうに話していたあの顔、そして「梶原景時殿ならわかってくれる」という一言。それ以上の言葉があるかい……。思えば最初から最後まで少年のように目をきらきらさせていた。純粋な義経……頼朝のばか……。
 壇ノ浦の戦いが終わり目標だった平家を滅ぼした義経の「これから私は誰と戦えばいいのだ」というあの一言がほんとうにとんでもなく素晴らしく、こんなの源義経のためのセリフでしかない。予告のときから心臓がざわざわしていた。平家を討った達成感と同時にやることがなくなってしまった虚脱感。それを見事に演じた菅田将暉さんがやばすぎる。戦いのなかでしか生きられないのは、戦中は心強いけど戦が終わればただの脅威。なんて皮肉な世の中だよ……。

 ちなみにこのドラマの主人公は北条義時、まわりのキャラが濃すぎるあまりまだ目立った動きができていないけれど、しかし義時がいないとなにもはじまらない。上総介が源氏側についてくれたのも、坂東武者がなんとなくまとまったのも、伊東家が最後に三人で顔を合わせて笑い合えたことも、頼朝が征夷大将軍になったことも、上総介が最期にすこしほほえんだことも(義時に思いを託していた…)義経が最期に楽しそうにできたことも、八重が生きてこれたのもぜんぶ義時がいなかったら実現しなかった!!!!
 そうである。八重は生きてきたのに……。義経が討たれ、地獄がはじまっているとわかっていつつもあと二週間くらいはきっとまだ誰も死なないさと思っていたのに容赦なく八重を退場させる鬼の脚本。義時をこれ以上つらくさせるな……金剛と鶴丸の友情には泣いたね、八重さんにみてほしかったね……。

 それにしても毎週毎週ロスを煮込んだ鍋にぶちこまれて火にかけられているような悲しみを味わっているんですが、これすべて俳優さんたちの演技がうますぎるため。ものすごい喪失感を味わうんだけれども、実際に演じられた俳優さんたちが今健康でいてくれている事実を思い出してめちゃくちゃ救われた気持ちになっている。ありがとういつまでも元気でいてください。

 そういえばこのドラマではとくに誰かに共感するとかないんですが(思想がそもそも違うから)、亀の前事件のときに、時政が発した「伊豆に帰りてえなあ」というぼやきに、伊豆出身のわたしは心底共感しました。なんかなにもかもつかれて投げ出したいときの「伊豆に帰りてえなあ」でした。

 

 ここまで読んでくれた人がいるならそれはドラマを観ている人だと思うんですが、もし観ていないけどここまで読んでくれたという人、ドラマみてー!!!!!!!めっちゃおもしろいからー!!!これからの義時の活躍を見届けよー!!!!!!

 

 平家物語もおもしろかったよっていう感想も書きました。

mrsk-ntk.hatenablog.com