今日もめくるめかない日

開き直って絶望する

 昔からよく他人と自分を比べてしまう。
 私には突出した特技というものがないし、なんというかとても平凡、むしろ平凡より下……? とか思う。
 かがやいている人を目の当たりにしては劣等感を抱いて「どうせ私は…」とうじうじしながら生きてきた。

 小説の新人賞の選評なんかを読んでいると、「自分にしか書けないものを書きなさい」「書くしかなかったと思わせるなにかをぶつけなさい」といったことがけっこう書かれている。私はそんな言葉を読むたび怖気づく。
 自分にしか書けないもの……? そんなの私にある……? 私が考えることはすでにだれかが考えていることだし、私がわざわざ言葉にしなくてもだれかが私以上の筆力で作品にするだろう。私が作品をつくらなくたって世界はなんら困らない。
 書いては応募、書いては応募を繰り返しながらそういったことを考えて絶望している。おもしろい作品を読んでは打ちのめされて絶望している。だから私は基本的に毎日絶望している。
 それでもどうして書こうとしているのか、もうこれはたぶん意地だ。格好のつく理由は、てきとうに言葉を並べ立てればなにかしら出てくるだろうけれど、いまいち気持ちとはまらない。ただ意地でもなんでもどうせ書くなら望まれた場所で書きたい。だれにも読まれなくたって自分を信じて書いていこう的な気持ちはいっさい持てない。自作を愛しているのが自分だけでもいいじゃないかとか言われてもまったく響かない。人と比べて生きてきたので、人からの評価がないと私は自分を評価できない。小説は基本的にひとりで書くものだと思うけど、私は独りでは書けない。

 小説だけでなく音楽や漫画、絵、キャッチコピー、デザイン、建築、広告、家電、番組、映画、ゲーム、料理、彫刻、服、バズるツイート、とにかく多くの作品が、人の心を射止めるなにかが毎日毎分毎秒うまれているわけだけど、数えきれないほどの作品がすでにたくさんあるのに、まだ新しいものをつくろうとする人って本当にすごいよな、みんな私みたいに絶望しながらつくっているのかな、それとも「自分がやるんだ!自分がやらなきゃだれがやる」と自信に満ちあふれたりしているのかな、後者だったら本当にすごいな、格好いいな、ということをなんとなく考えていたら、こんな雑文を書いていた。
 人と比べることなかれ、というのが正しい意見だと思うし、人と比べたってしょうがないという考えもわかってはいる。自分にしかないものというのが、だれにでもあるものなのかもしれない。けれど私はどうあがいても劣等感を抱き続けながらこれからも生きていくと思うので、もう開き直って絶望しながら書いていく。意地が勝つか絶望に負けるかの勝負になるんだろう。

 これが新年一発目のブログ、まったく前向きではない抱負を垂れ流しながらもあいさつを。みなさまあけましておめでとう。
 なるべく風邪をひかずに息災で過ごしてね。

2022年の読書

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 今年読んだ本はこんなかんじ、たくさん読めましたが相変わらず新刊はあまり追えていません。次から次へとおもしろい作品がうまれていくこの世、もはや怖い。

 上半期にもベストをまとめましたが今年一年のものをあらためて。だいぶ絞ったよ! 読んだ順です。

 

 

鳩の栖/長野まゆみ

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水琴窟という、庭先に水をまくと珠をころがすような安らかな音が鳴る仕掛け。操がそれを初めて知ったのは至剛の家の庭だった。孤独な転校生だった操を気遣ってくれた爽やかな少年至剛。しかし、快活そうに見えた彼には、避けがたい死が迫っていた。病床の至剛の求めるまま、操は庭の水琴窟を鳴らすのだが……。少年たちの孤独と淡い愛情、儚い命の凛々しさを描く表題作など珠玉の短編五編。

 やっぱりこの作品は外せない! 今年のはじめに読みましたがその瞬間から今年のベストになるだろうなと確信しており、やはり約一年すぎたあとでもいまだ心の奥にしっかりとたたずんでいます。短編集で、どの作品もよかったのですが表題作のよさはもう言葉にできん……。短い話のなかに感情すべてが詰まっている。絶対的な唯一無二感、うつくしさ、愛おしさ、儚さ、強さ、目に浮かぶ情景、季節がめぐりめぐってくることの喜びと切なさ……。好きなものぜんぶ詰まってました。感想書きました。


ミシンと金魚/永井みみ

ミシンと金魚 | 集英社 文芸ステーション

「カケイさんは、今までの人生をふり返って、しあわせでしたか?」
ある日、ヘルパーのみっちゃんから尋ねられた“あたし”は、絡まりあう記憶の中から、その来し方を語り始める。
母が自分を産んですぐに死んだこと、継母から薪で殴られ続けたこと、犬の大ちゃんが親代わりだったこと、亭主が子どもを置いて蒸発したこと。
やがて、生活のために必死にミシンを踏み続けるカケイの腹が膨らみだして……
この世に生まれ落ちて、いつの日か死を迎え、この世を去る。
誰もが辿るその道を、圧倒的な才能で描き出す号泣必至の物語です。

 カケイさんという一人の人生の語り、小説においての語りというのは本当に真骨頂ともいえるものだと思うのですが、実際に全編通してその語りに耳をかたむけられるほどの作品は案外少ない(というよりきっと書くのがかなり難しいのだと思う)。しかし「ミシンと金魚」は本当にずっと読んで/聞いていられる、というかもっともっと読みたいという気持ちになるのですが、死を迎える瞬間の描写には、私も終わりを受け入れるしかなかった。生まれて、生きて、死んでゆく。これは命あるもの皆におとずれるもので、しかしそれを正しく真正面から受け入れていくことは難しい。だからこそカケイさんの語りは本物で、描き切っているという言葉が似合い、直接響いてくるのです。

 

あの子なら死んだよ/小泉綾子

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 第8回林芙美子文学賞の佳作を受賞した作品。小説TRIPPERに掲載されたものを読みました。死に対する恐怖と憧れを抱きながら生きている女子高生の茉里奈。三人称作品ですがこちらも目が離せない語りで進んでいき、最初から最後まで危うい切実さがずっと描かれています。そう、私は切実さが描かれている作品が大好きで、死に対する思いを描く作品は数あれど、その作品にしか描けなかったものというのもきっと確かにあって、「あの子なら死んだよ」はそれが顕著だった。どこかにいそうな茉里奈の人物像は、けれどただ一人の茉里奈でしかないのだと思いました。そしてタイトルが本当に好き、ここ数年でいちばん好きなタイトルです。

 

おいしいごはんが食べられますように/高瀬隼子

『おいしいごはんが食べられますように』(高瀬 隼子)|講談社BOOK倶楽部

「二谷さん、わたしと一緒に、芦川さんにいじわるしませんか」
心をざわつかせる、仕事+食べもの+恋愛小説。

職場でそこそこうまくやっている二谷と、皆が守りたくなる存在で料理上手な芦川と、仕事ができてがんばり屋の押尾。
ままならない微妙な人間関係を「食べること」を通して描く傑作。

 167回芥川賞を受賞しましたね! やったー! ほんわか表紙からは想像もつかない心ざわめくお仕事食べ物小説(←この言い方も誤解を招くよね笑)。私は芦川さんみたいなタイプがすごく嫌いでいやだ、同じ職場にいたくないと思う人間ですが、感想を検索すると「自分は芦川さんタイプ」という声もけっこう見かけて、考えればそれは当たり前のことなんだけど(自分の想像力のなさといったら)、なんというか、本当にままならないなあと思った。働いていてストレスなんてあほのようにたまりますが、私はびっくりするくらい身体に影響しないので、すぐ休んでしまう人を、いや~な気持ちで「いいな、ずるいな」などと思ってしまうのも事実。でもだれかを責めたいわけじゃないんだよ、ただ思うことがないわけじゃないんだよ、というもやもやもやもやしたものを、ストレートに描いている作品です。ちなみに私はこの作品を読んで転職をしようと決めました。押尾さんありがと! 感想書きました。

 

えーえんとくちから/笹井宏之

筑摩書房 えーえんとくちから / 笹井 宏之 著

風のように光のようにやさしく強く二十六年の生涯を駆け抜けた夭折の歌人・笹井宏之。そのベスト歌集が没後10年を機に待望の文庫化!解説 穂村弘

 風のように光のように……本当にそんな言葉がにあう方の歌集。どんなふうに世界がみえていたのだろうと圧倒される。一首一首に本当にうつくしい景色が浮かんできます。

わたがしであったことなど知る由もなく海岸に流れ着く棒
廃品になってはじめて本当の空を映せるのだね、テレビは
ひきがねをひけば小さな花束が飛び出すような明日をください
もうそろそろ私が屋根であることに気づいて傘をたたんでほしい

 普段は目にうつらないような無機物だって世界の一部であり、むしろ世界に必要な景色なんて本当はどこにもないのかもしれないし、だけどどんなものでも必要なものなのかもしれない、そんなふうに思います。

 

無垢なる花たちのユートピア/川野芽生

無垢なる花たちのためのユートピア - 川野芽生|東京創元社

地上からはるか遠く離れたところにあるという楽園を目指し、天空を旅する一隻の船。
そこでは花の名前をつけられた少年たちが、導師と呼ばれる大人たちのもとで寮生活を送っていた。最も大切なのは心の純潔さであると教えられた少年たちの暮らしは慎ましく清らかで、船の中はこの世界のどこよりも楽園に近い場所と思われた。
ある日、白菫という少年が舷から墜落する。皆が不慮の事故としてその死を悼んだが、親友の矢車菊は白菫が落ちる直前の様子を知り、彼がみずから身を投げたのではないかと疑問を持つ。だが、希望に満ち溢れたこの美しい船に、いったいどんな不幸があるというのか――親友の死のほんとうの理由を探して、矢車菊は船内の暗い場所へと足を踏み入れる。幻想文学の新鋭による初の小説集。

 今年はこの作品のよさをけっこうつぶやいてきたつもりですが伝わっていますか……!? 幻想小説でありながら綺麗なだけでない、いや裏側の醜さがあるからこその綺麗さを見せられて呆然としました。でも紡がれる一文一文はたしかにうつくしいのですよ……うつくしい文章ってそれだけで泣けるよね……この作品はうつくしさに加えて汚さもしっかりと同じくらいの分量で描かれており、そのうえでうつくしいのですよ……。感想書きました。

 

ペーパー・リリイ/佐原ひかり

ペーパー・リリイ :佐原 ひかり|河出書房新社

野中杏、17歳、結婚詐欺師の叔父に育てられている高校2年生。
夏休みの朝、叔父に300万円をだまし取られた女性キヨエが家にやって来た。
キヨエに返してやりたい、人生を変える何かをしてあげたい。
だってあたしは「詐欺師のこども」だから。

家から500万円を持ち出し、杏はキヨエと一週間限定の旅に出る。
目指すは幻の百合!

 夏!爆走!エモ!なロードノベル。夏っていいよな~~~~~私は夏の大きいところ、なんでもできる気持ちになるところ、わけもなく走り出したくなるところ、夕方はすこし切ないところ、短いところ、それゆえ特別なところが大好きです。夏の景色をそのまま切り取ったような青春小説、と言いながら残念な大人が出てきたり、きらきらした青春とは少し違うかもしれないけれど、爽快感は抜群だと思います。恩というのは厄介で、「もらったもの」に対する気持ちの置き場に迷っていた私ですが、読んだあとは素直に心が軽くなりました。感想書きました。

 

とんこつQ&A/今村夏子

『とんこつQ&A』(今村 夏子)|講談社BOOK倶楽部

真っ直ぐだから怖い、純粋だから切ない。あの人のこと、笑えますか。
“普通”の可笑しみから、私たちの真の姿と世界の深淵が顔を出す。

大将とぼっちゃんが切り盛りする中華料理店とんこつで働き始めた「わたし」。「いらっしゃいませ」を言えるようになり、居場所を見つけたはずだった。あの女が新たに雇われるまでは――(「とんこつQ&A」)

姉の同級生には、とんでもない嘘つき少年がいた。父いわく、そういう奴はそのうち消えていなくなってしまうらしいが……(「嘘の道」)

人間の取り返しのつかない刹那を描いた4篇を収録、待望の最新作品集!

 何回かこの作品の感想を書くぞと意気込みましたができず結局時間が経ってしまいました。今村夏子さんの作品を読んだことのある方ならわかってくれると思うのですが、感想書くのめちゃくちゃむずかしくないですか。ちょっとあらすじを説明しようとするのも厳しくないですか。私はこの作品を妹に貸したのですが、読む前に「どんな話?」と聞かれて「ちゅ、中華料理店の話……」としか返せませんでした。なにも伝わらねえ……。ただひとつ言えるのは、さすが今村夏子さんとでも言いますか、この人間の描き方はもはやホラーです。このいかにもノートな(一見)かわいらしい装丁に惹かれ気軽に手に取って、脳がバグる人続出しているのではないでしょうか。

 

汝、星のごとく/凪良ゆう

『汝、星のごとく』(凪良 ゆう)|講談社BOOK倶楽部

その愛は、あまりにも切ない。

正しさに縛られ、愛に呪われ、それでもわたしたちは生きていく。
本屋大賞受賞作『流浪の月』著者の、心の奥深くに響く最高傑作。

ーーわたしは愛する男のために人生を誤りたい。

風光明媚な瀬戸内の島に育った高校生の暁海(あきみ)と、自由奔放な母の恋愛に振り回され島に転校してきた櫂(かい)。
ともに心に孤独と欠落を抱えた二人は、惹かれ合い、すれ違い、そして成長していく。
生きることの自由さと不自由さを描き続けてきた著者が紡ぐ、ひとつではない愛の物語。

ーーまともな人間なんてものは幻想だ。俺たちは自らを生きるしかない。

 か、櫂~~~~~~~~~~~~!!読んだあとしばらく経っても櫂ロス、思い出すと胸がくるしい、私は…私は……この作品を読んでぼろくそに泣きました。私も田舎出身なので、田舎の窮屈さ、やりづらさは身に染みてわかり、そして東京の忙しなさや魅力もわかるので暁海と櫂どちらのパートも心が休まることがなく、それでも二人が星のかがやきをどうか忘れませんように…花火一緒に見て…の気持ちでした。北原先生のスピンオフもしっかり読みました。願わくば尚人のスピンオフもください……オェ…ッ(嗚咽)

 

植物少女/朝比奈秋

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 小説TRIPPERで読みました。植物状態である母、自分が生まれたときからその状態だったから、母の植物状態前の姿をうまく想像できない美桜。二人の関係性や美桜の心情、ありのままという状況を丁寧に描いている作品。母が植物人間という設定だけ見れば、あざとくわざとらしい物語になりそうなところ、安易に物語化させない、美化させない。これが本当にすごい。美桜の普通、父や祖母の普通、呼吸をし生きているということを実感する描写の筆致が圧倒的で、とにかく胸を打たれました。美しい話にさせず、美しさを感じさせる作品です。感想書きました。
 そして一月に単行本出るみたいです!買うよ!!

緑と楯 ロングロングデイズ/雪舟えま

緑と楯 ロングロングデイズ 雪舟えま歌集【短歌研究文庫】 - 短歌研究社

短歌新文庫シリーズに忽然とBL歌集出現!

学生服から白髪を超えて(ロングロングデイズ)、
金太郎飴のごとく、どこを切っても愛の日々! 

表題作369首に加え、
歌集『はーはー姫が彼女の王子たちに出逢うまで』269首を併録した2部構成。
「解説」に代えて、作品世界を表現した漫画家・紀伊カンナ氏による描き下ろしイラストを収録。

 愛は世界を救うってもしかして本当のなのかもしれない……と本気で思ってしまう。だって愛がほとばしっている……。え~~~~~んもう私は緑と楯が大好きだ~~~~~~好きすぎてどうにかなるよ~~~~~~~一首一首が本当にいいんだよ~~~~!!!

立てぬほど小さな星にいるみたい抱きしめるのは倒れるときだ
ねえ次はどこに住もうか僕たちはお互いの存在が家だけど
おれの中に勝手に花を作るなよ勝手に野うさぎを放すなよ
奇跡とは君がかすかに首かしげ散歩を延長するか訊くとき
ああ宇宙ふたりから生まれたごみをふたりで捨てにゆく喜びよ

 ああ宇宙……ありがとう……来年も生きる……。感想書きました。

 

フィールダー/小谷田奈月

フィールダー/古谷田 奈月 | 集英社 ― SHUEISHA ―

迎え撃て。この大いなる混沌を、狂おしい矛盾を。
「推し」大礼賛時代に、誰かを「愛でる」行為の本質を鮮烈に暴く、令和最高密度のカオティック・ノベル!

総合出版社・立象社で社会派オピニオン小冊子を編集する橘泰介は、担当の著者・黒岩文子について、同期の週刊誌記者から不穏な報せを受ける。児童福祉の専門家でメディアへの露出も多い黒岩が、ある女児を「触った」らしいとの情報を追っているというのだ。時を同じくして橘宛てに届いたのは、黒岩本人からの長文メール。そこには、自身が疑惑を持たれるまでの経緯がつまびらかに記されていた。消息不明となった黒岩の捜索に奔走する橘を唯一癒すのが、四人一組で敵のモンスターを倒すスマホゲーム・『リンドグランド』。その仮想空間には、橘がオンライン上でしか接触したことのない、ある「かけがえのない存在」がいて……。

児童虐待小児性愛ルッキズム、ソシャゲ中毒、ネット炎上、希死念慮、社内派閥抗争、猫を愛するということ……現代を揺さぶる事象が驚異の緻密さで絡まり合い、あらゆる「不都合」の芯をひりりと撫でる、圧巻の「完全小説」!

 私たちがかかえる不都合さ、矛盾、ずるさなんかを思いきりあらわにして真正面から力強く描いた作品。本当いろんなテーマがてんこもりで飽きさせず、しかし筋がめちゃくちゃになることもなく、あらすじにある「完全小説」というのにもしっかり納得。今いちばん読んでおきたい小説だと思います。感想書きました。

 

 というかんじのベストです。わりと有名どころになったね。今年もおつきあいくださりありがとうございました。来年もたくさんよい作品にめぐりあいたいです!


↓上半期にまとめたベスト

mrsk-ntk.hatenablog.com

↓2021年にまとめたベスト

mrsk-ntk.hatenablog.com

 

 

今年のふりかえり

 今年も残り一週間、みなさまいかがお過ごしですか。今年も引き続き大変な一年であり、なかなか「いい年だった!」とはいえないかもしれないけれど、私は幸いなことに風邪も怪我もなく、今年のはじめに祖母が他界しさびしくもなりましたが、その後はありがたいことに身内は元気。と思っていたらついこのあいだ妹と甥がコロナに感染したと連絡がきてハワワとなりましたがいまは体調も復活したようです。安堵。
 少し早いけど備忘録として今年をなんとなく振り返り。あとは今年読んだ本のベストをまた後日まとめたら2022年のブログおさめとなりそうです(最近ほとんど書いてなかったけど)。

 

 振り返りといっても、今年なにしてましたっけとすぐに思い浮かんでこないほど水のように流れていったこの一年。大きな出来事もとくに起こらなかったけれど、そのなかでも私にとっていちばん印象深いことはやっぱり第21回R-18文学賞の最終候補に残ったことだと思います。
 はじめて応募して最終まで残してもらえたのはもうほとんど奇跡、まぐれなんじゃないかと動揺しまくり、この賞は最終候補作を全文公開してくれるというレアでありがたい賞なのですが、自分の作品が大勢の人の目にふれるというプレッシャー、私だけ下手すぎない…?の絶望がものすごかった。けれど選考委員の先生方からのうれしいうれしい選評、連絡をくれた編集部の方の言葉、作品に寄せられた感想には、「書いてよかった」の気持ちしかなかったです。本当にありがとうございました。
 受賞はならずだったので次こそと意気込み、もしまた残してもらえることがあっても恥ずかしくない作品を書こう、前よりおもしろい作品を書こうというのを目標にして22回も無事応募、一次選考がつい先日発表され、通っていたのでありがたくほっとした気持ち。
 通っても落ちても、まだ書いていきたいので、来年も自分のペースで作品をつくれたらいいなと思います。


 あとはヤクルト1000の生活をはじめました。私は風邪を引いたとしても薬を飲んだらその場ですぐ「よくなった気がする」と思えるくらい単純で自己暗示力が高く思い込みが激しいので、ヤクルト1000を飲んでいるだけで健康になった気分。来年もこの生活は続ける予定ですが、毎週約1000円近く払うのがくるしくなってきたので、最近は二週間に一回にしました。減らしたことで腸の元気がなくなっているのではないか?と心配をしている。

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 夏はまた長編の賞に応募したくてヒィヒィ言いながらいろいろ書いてました。書けた枚数270枚くらい、生きてきたなかでいちばんたくさん書いた気がする。これは中編といえる枚数なのかもしれないけど、自分にとって大変だったので長編と呼ばしてもらうぜ……。こちらもまさかの一次通過していたので目標は達成しました(せめて一次だけでもの気持ちだったので)。こうやって考えると、きっと今年は運がよかったんですね。

 

 あとは引っ越しなども。ちょうど荷物の運搬日が九月のくそやべー台風の日で泣きました。業者の方も悪天候のなかすみません。でもだれも悪くないからゆるしてね。だれも怪我がなくてよかったです。今もリビングでこの記事を書いているけれど、広々快適。自分用の部屋があるというのもこれまた最高で、私はとにかく一人一人の部屋があることが絶対条件、だって喧嘩したときとか一緒に部屋にいるの絶対いやだし。それを夫に話したら、喧嘩する前提で部屋さがすの!?と呆れられましたが、だって絶対喧嘩はするよね!?

 

 好きな作家さんのトークイベントに行ったりなどもしました。めちゃくちゃ楽しかったな~。そこでいつもお世話になっているフォロワーさんに会えたりもしてうれしかったです。最近の私の交流関係、たぶんネットのほうが濃密になっている気がする。来年は文フリに行ってみたいという目標をかかげているので素敵な縁ができたらいいな~などと夢みたり。

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 あ、あと転職もしたね。これも大きい出来事だ。五年近くつとめた会社だったのでさびしいですが、やめて一カ月後にさっそく忘年会だと集まってくれたり、毎週日曜日、鎌倉殿の13人の感想を社長と送りあったり、退職後もなんだかんだと仲良くやらせてもらっている不思議なご縁。小さな会社だったからこそだと思います。

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 そう、今年ははじめて大河ドラマにはまりました。私のフォロワーさんでみているひと意外といなかったのか、毎週ひとりでやんややんや騒がしかった気がします(いつもおひとり反応し合ってくれるフォロワーさんがいました。謝謝)。ドラマを毎週みるということがなかなかできないので(いつ放送しているのか忘れるし、見逃したらもうどうでもよくなっちゃう)、一年きっかり見続けられたことに、いかに自分がハマっていたかがわかる。日曜日の夜はだれかに誘われても大河ドラマみるからと絶対断ってました。だから交流が希薄になっていくのかな…!?

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 あ!神保町ブックフェスティバルにも足を運んだのだった。めちゃくちゃ楽しかったな……。本がたくさんあるという状況ももちろんのこと、集まっている人がとにたくたくさんいて、なにかしらの本好き、本を買い求めに、本をちらりとでも見ようと、なんとなく立ち寄った、理由はさまざまだろうけど、でも、「本」という共通の認識のもとこんなに大勢の人がいるなんてと感動した。そこにあるものすべて特別に思えた。あ~~~~~~来年は京都にも行きたいです。下鴨の古本まつりに生きているあいだにおとずれたい。

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 と私の2022年はたぶんこんなかんじ。あと二冊ほど読んだらベストをまとめようと思っています。少し早いけど、こんなブログを読んでくれたみなさま、今年もありがとうございました。来年がみなさまにとって、本当によい年となりますように。

 

 

特別お題「わたしの2022年・2023年にやりたいこと

迎え撃つ(フィールダー/小谷田奈月)

 先日こんな話を聞いた。
 最近は小学生のうちからSDGsについて勉強するための授業が設けられているらしいのだが、ある生徒が目標を達成するなら人間がいなくなればいいという答えを出したということ。わたしはこの話を聞いて、極端だなあと少し笑ったあとに、でも究極そのとおりだよなと思った。突き詰めればそれがいちばん「筋が通っている」と思った。

 それからわたしはかわいいものがときどき怖い。たとえば昔、シルバニアファミリーの人形で遊んでいるとき、夢中になっていた半面で、小さくて愛らしいあの人形たちのことが怖くて、そして腹立たしかった。実はわたしは赤ん坊も少し怖い。(自分だって赤ん坊だったんだけど)ひとりではなにもできない無力なものたち、簡単にひねりつぶされてしまいそうな小ささ、力の弱さ。だけど、「かわいい」以外の感情を抱いてはいけないと思わせる、あのかわいさが怖い。

 悲しいニュースに心を痛めたとき。数日後、下手したら数時間後、もうその痛みをこの身体は感じなくなっていて、わたしはわたしの生活を送っている。そのこと自体に胸が痛むこともあるけれど、結局その痛みも消える。

 こんなふうに、あまり直視していたくない自分の感情というのはいくつかある。見て見ぬふりをしたいことが、この世界にはたくさんあるのだ。目を向けたら途端に生きづらくなる事実、起こった事実に感じる感情と行動の矛盾、ぜんぶ隠してあたたかくてやさしい言葉でなかったことにしたい。それが人間なのだから、というてきとうな言葉で納得したい。そんなずるい感情を正確に狙い撃ちしてくる作品。それが小谷田奈月さんの「フィールダー」でした。

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迎え撃て。この大いなる混沌を、狂おしい矛盾を。
「推し」大礼賛時代に、誰かを「愛でる」行為の本質を鮮烈に暴く、令和最高密度のカオティック・ノベル!

総合出版社・立象社で社会派オピニオン小冊子を編集する橘泰介は、担当の著者・黒岩文子について、同期の週刊誌記者から不穏な報せを受ける。児童福祉の専門家でメディアへの露出も多い黒岩が、ある女児を「触った」らしいとの情報を追っているというのだ。時を同じくして橘宛てに届いたのは、黒岩本人からの長文メール。そこには、自身が疑惑を持たれるまでの経緯がつまびらかに記されていた。消息不明となった黒岩の捜索に奔走する橘を唯一癒すのが、四人一組で敵のモンスターを倒すスマホゲーム・『リンドグランド』。その仮想空間には、橘がオンライン上でしか接触したことのない、ある「かけがえのない存在」がいて……。

 児童虐待小児性愛ルッキズム、ソシャゲ中毒、ネット炎上、希死念慮、社内派閥抗争、猫を愛するということ……現代を揺さぶる事象が驚異の緻密さで絡まり合い、あらゆる「不都合」の芯をひりりと撫でる、圧巻の「完全小説」!

 かなり濃密な長編小説、本の帯にはさらに「以下のあらすじは、本書の凄まじさの1割も表現できておりません」という一文が添えられている。わたしはけっこう、こういう期待値を上げる文に敏感というか、身構えてしまうタイプで、素直に感激することが少ないのですが大丈夫!!!!ほんとうに9割以上の凄まじさがありました。9割以上で日本語合ってる?

 

 というかこの作品、あらすじを説明するのがめちゃくちゃ難しい。作品自体はややこしいわけでなく、文体もかなり読みやすい。ただ、次から次へといろんな問題が投げかけられてくるのであらすじ読むよりもうとにかく本文を読んだほうがなにより早い。
 出版社に勤める橘、橘のもとへ長文メールを送る小児性愛を疑われている黒岩文子、橘が夢中になっているスマホのオンラインゲーム「リンドグランド」で一緒に戦う隊長。登場人物わりと多いのですが、主になるのはこの三人。「リンドグランド」内でヒーラーとして戦う橘は、黒岩や隊長のことも気にかける。橘がなぜ黒岩や隊長の味方であろうとするのか、助けようとするのか、その理由が明かされたとき、ぶっ倒れそうになった。それはたぶん多くの人が感じたことのある、絶対に人には言えない利己的な理由。でもその利己的さは、とても理にかなっていて矛盾がない。

 

 ケア、ルッキズム希死念慮、虐待、炎上、当事者と非当事者、「リアル」じゃないソシャゲへの逃避。先にも書いたけれど、「フィールダー」には本当にたくさんの問題が潜んでいる。そのひとつひとつをきれいに解決するような作品ではなく、とにかくあぶり出してくる。その問題のひとつひとつはすべてつながっているわけではない。ただ、虐待をされている(可能性のある)子どもと愛情ゆえ身体的な接触をした黒岩文子と、オンラインでのつながりしかない隊長の身の上を心配し味方になろうと橘の境遇はどうしても重なる。黒岩が橘に送ったメールのなかに、こんな文がある。

橘さん、あなたは心の底から誰かのことを、かわいいと思ったことがありますか。かわいい、そう思った瞬間にその子のかわいさが絶対的事実として確定し、さらに増幅し、そうしてもうただかわいい、かわいい、と思いを重ねていくほかなくなる、そんな経験がおありでしょうか。

 相手を無性に「かわいい」と思うこと、そう思えたからこそ黒岩と橘は相手のことをケアしようと思った。「かわいい」という絶対的事実の前で、正しさや善悪などというものは通用しなくなる。でも相手が救われるならそれでいいのかもしれない。ただ、「かわいい」という感情が生まれるのは全員に対してではない。その差はどこから生まれてどこへ消えていくんだろう。

 

 生きづらさ、不遇、不幸せな環境。よく、人が感じる不幸に度合いはないなんて言うけれど、たしかに客観的にみたら些細なことでも傷ついたならどれだけ不幸だと感じたっていいとは思うけれど、不幸の度合いには差がある、というか、差があるとどうしても思ってしまう。
 仮に差があろうとなかろうと、生きている人間は少なからず生きづらさというのを抱えていると思う。取り立てた不幸のない人生を歩んできていても、こんな言い方は傲慢に聞こえるかもしれないけど、それゆえ生きづらさを感じることはある。当事者ではないことが、ときどき見えない壁となって、私たちを立ち止まらせることがある。
 いくら取材を重ねても、いくら心を寄せようと思っても、フィールドワーカーのままでは「弱い」。「言葉に説得力をもた」せられない。だから橘は、当事者になろうとする、「フィールダーにならなくては」と思う。
 
 この作品は、私たちがぶち当たる問題を解決しない。「フィールダー」は都合のいい攻略アイテムなどではない。突然ドラゴンが現れて、平気な顔して私たちを狙い撃ちしてくることなんてきっとたくさんあるのだ。燃えたくないから逃げていたい。けれど私たちはこの世界に立っているフィールダーであり、そのひとつひとつを迎え撃たなくてはならない。
 凄まじい小説である。それでも絶望しきれない。引き返せないことを教えてくれるような、うしろから攻撃力を高める技をかけてくれるような、そんな小説である。きっとこの作品もまた、フィールダーとして存在しているのだと思う。

 

 本当はもっともっと感じた気持ちや書きたいことがあるはずなのに、こんなことしか書けなくて(「紙幅」は十分あるはずなのに!)、1割どころか1%もすごさを伝えられていないのではないかと思っているのですが、とにかく読んでみてほしい、間違いなくここ数年のベスト5に入る一冊でした。

ときめきで倒れる(緑と楯 ロングロングデイズ 雪舟えま歌集)

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 いままでもこのブログで雪舟えまさんの作品への愛をたびたび語ってきましたが、また最高の一冊が爆誕してしまいました。

tankakenkyu.shop-pro.jp

短歌新文庫シリーズに忽然とBL歌集出現!
学生服から白髪を超えて(ロングロングデイズ)、
金太郎飴のごとく、どこを切っても愛の日々! 
表題作369首に加え、
歌集『はーはー姫が彼女の王子たちに出逢うまで』269首を併録した2部構成。
「解説」に代えて、作品世界を表現した漫画家・紀伊カンナ氏による描き下ろしイラストを収録。

 369首+269首=638首というめちゃくちゃ大ボリュームな歌集。「どこを切っても愛の日々」とはまさにそのとおりで、緑と楯の愛しく、それゆえときどき切なく、しかし幸福すぎる緑と楯ファンにはたまらない一冊でした。愛すぎる。

 緑と楯は、雪舟えまさんの小説などに登場する男の子たちなのですが、この二人を知らずともじゅうぶん楽しめると思います。実際、私が雪舟えまさんを知ったのはまさに緑と楯をうたった短歌だったのですが、緑、楯という名前が出てきて最初は?だったけれども、そんな疑問はいっさいどうでもよくなるようなときめき短歌が詰まっていて胸がたぎりました。キュン…というかもうギュンギュンするとおもいます。ときめきで倒れます。

詰め替え用を赤子のように抱きとる夜明けのスーパーよ永遠なれ

 たぶん洗濯洗剤の詰め替え用を、大事に手に取ったんだね…。詰め替え用って生活が続いていく証明だもの…大切にしたくもなるってものよ…なんか大きい詰め替え用=洗濯洗剤と思ったけどこれシャンプーの詰め替え用でもいいね…そして詰め替え用を手に取る姿をみて、この時間が永遠になってほしいと思ったしゅんかん尊……ていうか二人で夜明けのスーパーにいること自体もうやばくないですか。愛じゃん。なくなっていることに気づいて散歩がてら買い物に行ったのか、どこかへ行った帰りなのか、いろいろな妄想がはかどります、この一首だけでも!「赤子のように」という繊細な手つきをするのは楯なんじゃないかなあと思うので、わたしはこの短歌は緑視点で読んでいるけど、逆なら逆でそれもいい。

 緑と楯はいろんな作品で出てくるので、こういう性格と限定するのも違うのですが、それでもわたしのなかで緑は生真面目、楯はそれにくらべて飄々としているかんじ、愛情をわかりやすく表現するのは緑のほうで、楯はすずしくその愛情を受け取りながら、でもときどき緑に負けないくらいの愛が爆発するときがあるんだ……とかわたしは緑と楯シリーズを読みながらそんなことを考えたりなどしています。みどたてシリーズ読んでない人からしたらなに言ってんだこいつって感じだと思うのですが、気になったらぜひ読んでみて……そしてこのギュンをわかちあおう!!

交番で体操をする青いひと羽ばたきそうで君と見ていた

 

SFを読んでいたところだというその手で頭を撫でてください

 

嫌いから好きへと変われば信号に引っかかりまくるという祝福

 この他愛もない、いや愛しかないなにげない日々の二人のしゅんかんが詰まりに詰まった歌集なのですよ。こんな歌が638首も入ってるんですよ。どうですか、欲しくなりませんか……。だれかを好きになったときって、何回信号に引っかかってもゆるせる気持ちになるけど、それを緑は祝福と感じる素直さを持っているのだ……。いやこれは楯視点かもしれませんがこの歌は緑の歌のはずです。緑はこういう、素直でかわいいところがある。楯もそういう緑が大好きなのだ・・・ぎゃあ!!!!!!!愛!!!!!

 また、この歌は緑、この歌は楯……とおもう最大な理由は呼び方にあって、緑は楯のことを「きみ」と呼び、楯は緑のことを「おまえ」と呼んでいると思うのですよ。

「ひ買って」と君が書くのはひきわりの納豆買ってきてということ

 

油断すると君が重たいほうを持つ米をよこしてガーベラを持て

 

うちの糸偏いますかと君の声しておれはもう存在が挙手

 

布団の中のおまえはとても楽しげでつられて布団に入ってしまう

 

指で作ったマルにおまえを見ているよ小さいね宇宙一の宝は

 ねえわかる!!!???わかりますか!!!??緑と楯の在り方が伝わってくる!!!!!!!「りょうかい」を「り」「りょ」などと言うように、楯はひきわりの納豆を買ってきてほしいことを略して「ひ買って」と言うらしいですね、それってつまり「ひかって」……緑に対して「光って」って言ってるということ……。え?愛じゃん……。
 ガーベラの歌もまじで大好きすぎて何回も反芻しているのですが、これたぶん最初にお米持ってるの楯なんですけど、逆でもいいよね……ていうか二人ともガーベラ持ってくれわたしが米何キロでも持つよ。
 緑のことを「うちの糸偏」って!!!!!!!!!!!!なにそのたからものみたいな呼び方……と思ってたら緑のことを「宇宙一の宝」とか言っちゃう……アキくんがコンを呼び出すみたいな感じで指でマル作ってるんでしょ…(ごめんとつぜんのチェンソーマン)。楯の緑に対するいとしさあふれまくる口調もたまらないのですよね……。そして「存在が挙手」って、全身で喜んでるじゃん緑……。かわいすぎるし愛しすぎるし、そんなふうに感情を表現してくれる緑だから、楯はこの人と生きていけるんだよね……。何度も言いますが、こんな歌が638首!!!!638首もこの一冊のなかにあるのですよ。

 みどたて小説を読んでいなくてもじゅうぶん楽しめる一冊だけど、ほかの作品も読んでいれば「あっっっっこの歌はあの作品のあのシーン…!」とオタクにとって最高の楽しみ方もできるので、気になった方ぜひぜひ雪舟えまさんのほかの作品も読んでみてください。

今は、いや今世で解らずともよい俺たちには永遠があるから

 来世でも緑と楯に逢いたいですが、少なくともわたしは今ふたりに逢えてよかったと心から思う今世です。

 

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神保町でひっそりと感動

 10月29日(土)きもちのいい秋晴れ、神保町でブックフェスティバル、神田古本まつりが開催されているということで意気揚々と出かけてきた!

 はじめて行ったのですが予想以上にすごい人で、老若男女たくさんの本読みたちが集結しているのか……と思うとなんかうれしくなって心もうるおうね。

 ブックフェスティバルでは、出版社がそれぞれワゴンを出していてブースになっていたのですが、場所によっては人があふれかえりワゴンに辿り着くのが困難なところもあって、独特の““熱””がこもっていた。とくに東京創元社はめちゃくちゃ列ができていて、どなたかツイートされているのをみたけど、「壁サー」状態だった。

 

 ひとつひとつワゴンを見ながら買った本がこちらです。

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 普段あんまり手に取ることのない国書刊行会の本を3冊「星のアリスさま」「煙が目にしみる」「ボウエン幻想短編集」! 国書刊行会のワゴンも人がすごくて、やっとワゴンに辿り着いてもじっくり選ぶというのはさすがに憚られ、ぴんときたもの、とくに幻想文学ははずせないだろオリャー!!と買いました。1冊1000円(喜)!

 ナナロク社では谷川俊太郎さんの詩集と前から少し気になっていた木下龍也さんの短歌教室、青土社ユリイカ現代思想のまとめ買いが安かったので気になるユリイカのタイトル2冊買いました。わたしは吉本ばななさんが好き! あとぬいぐるみ特集の執筆陣の豪華さ! 河出書房の「須賀敦子エッセンス」は完全にジャケ買い?装丁買い?です。

 

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 古本まつりのほうもたくさん人がいて、お店の前にずら〜っと棚が並び黄ばんだ本などが並ぶ景色をみるのはそれだけで幸福……。人と人のすきまから棚やワゴンを眺めて、上の4冊を買いました。わたしは「智恵子抄」が好きなのさ!

 

 夫とふたりで出かけたのですが、夫は本を読まないので、本がたくさんある空間へへへたまらねェ…と歩き続けるわたしの後方でただの荷物持ちの人になっていた。そんな夫が、ここにいる人みんな本が好きなんでしょ…と驚きながら、「こんなにたくさん本があるなかでよくみんな読みたい本をみつけられるね」と言っていたのが印象的だった。本当にそうだね。一生をかけても題名すら知らずにまじわらない本が無限のようにあるのに、よくもまあ一冊の本と出会えるよねと、人と古本とカレーのにおいなどがたちこめる神保町のなかで、わたしはひっそり感動した。

退職した

 10月5日、4年半とすこし勤めた会社を退職した。

 勤めていたのは小さな編集プロダクションで、雑誌や書籍の編集・ライター業務が主な仕事だった。

 ずっと出版業界にあこがれがあったのに、どうせ私なんて無理よ…と思い、はなから諦めていたけれど、あるきっかけで飛び込んで、約5年なんとかかんとかやってきた。

 出版業界というのは超ホワイトとはいえなくて、また編プロなんてただの下請けであるからして、超はなやか〜キラキラ〜!みたいなことはまったくなくて、まあ疲れる疲れる。それでも私は運がよかったのか、人間関係にはめぐまれて、なにかと面倒をみてくれる人がいて、未経験ながらもなんとかかんとか仕事をおぼえて、ひとりでいろいろとできるようにもなって、いやなこともたくさんあったけど、振り返ってみれば本当にお世話になったなあと感慨深い。

 

 今日は送別会などしてくれて、とはいってもコロナ禍ではあるしそれぞれ仕事もあるからと会社の会議室で飲み会という催しだったけれども、お寿司にピザに揚げ物オードブルと、小学生がリクエストしたのかというような食べ物が並び、ビールもおいしいくお酒がすすむ。

 なんだかんだ5年近く勤めたのだから私の思い出話なんかが話の種になるのだろうとこっそりいろいろ話すことを用意していたのだけれど、乾杯!おつかれさまでした!のかけごえのあとに、違う部署の映画好きの人がいたからその人に軽くおすすめの映画ありますか、私は最近いまさらだけどローマの休日をみていたく感動したのだと伝えたら、出てくる出てくるマニアックな映画の数々、いつのまにか黒澤明監督の影武者がいいという話になり、おじさんたちが大盛り上がり。ローマの休日に感動したと最初に言ったのに、まったく違うベクトルの映画を持ち出すセンス。

 乾杯してから一時間半、マニアックな映画の話に花が咲き、私の思い出話なんてひとつも出す暇がなかった。そういうてきとうなところが居心地よかったといえばそうなのであって、まあいいか、と思ったり。

 映画の話が終わらないままおひらきの時間が近づき、さすがにひとことくださいと言われても、いまさら思い出話を持ち出す雰囲気でもないし、いい風なことを言おうとも思っていなかったし、えーと、あの、ありがとうございました、ということばだけで終わってしまった。それだけ!?と突っ込まれれば、いまさら言葉で飾りつけなくとも、私たちにはたくさんの思い出があるじゃないですかと結局いい風な言葉で締めくくってしまった始末。

 それでもなにか言っとこうかという気持ちが膨れて、面接に来たときのことなど思い出し、そういえば私は面接の前にお腹がすいて、会社のビルのとなりにあった松屋に入り、牛丼一杯食べてから面接に臨んだのだった。でも面接をした人はそんなことは知らず、当時人手不足でヒィヒィ言っていたのもあって、牛丼食べてから面接に来た女に、翌日速攻で内定を出した。

 そんな感じでふわ〜っと入社した会社だったけれども、本当に大変なことがたくさんあった。だけど楽しいこともたくさんあった。奥付けに自分の名が載るのはすごくうれしいことだね。

 

 明日もふつうに電車に乗って会社へ行ってしまいそうな、退職した実感がまだない。自分で転職すると決めたけれど、やっぱり慣れ親しんだ環境を離れて、まったく知らないところで働くのはとても不安だ。でも私を頼ってくれた会社がたしかにあったことを忘れずに、少しだけでも自信を持って、新しい場所に行ってみる。