今日もめくるめかない日

植物少女/朝比奈秋

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 小説を読んでいると、ときどき、本当のことが書かれているな、と思う作品に出会う。小説は基本的にフィクションであって、なかには事実をもとにしたものもあるけれど、事実がどうとか実際に起こったことを本当と言っているのではなく、ご都合的なことがなく、作品のなかである事象がそのまま書かれているということ。うまく言えないんだけれども、伝わって……。

 

 物語はある程度、きれいにまとめることができるものだと思う。もしくは、容赦なく地獄に叩き落とすくらいの絶望を描くとか。もちろんそれが作品としてのおもしろさにつながるわけだし、つくられた物語が悪いというわけではない(そもそも、創作はつくられたものなのだし)。

 それでもなかには、無理にきれいにせず、無理に叩き落とさず、無理に気づきを与えず、無理に伝えようとしない、そのままの物語があったりする。そういう“無理さ”がない作品を読むと、本当のことが書かれている、と思う。無理さというのは、仕掛けと言い換えることもできる。それって小説としておもしろいのか、と思うかもしれないけれど、そしてそんな無理さがない小説をおもしろくするには、きっとかなりの筆力が必要になるのだと思うのだけれど、あったのですよ。それがこちらの作品です。

publications.asahi.com

 現在発売されている小説TRIPPERの秋号に掲載された朝比奈秋さんの「植物少女」。

 出産時に脳出血を発症し、植物人間となってしまった母、そのとき生まれたみお(美桜)。冒頭、母の葬儀のシーンからはじまり、葬儀屋に「生前の母はどんな人だったか」と聞かれるみお。みおが生まれたときから植物状態だった母がどんな人間だったかを、少しずつ回顧していく……というふうに話は進む。
 みおは父と祖母(母の母親)と一緒に暮らしており、小さなころから母の入院先へお見舞いに行っている。母は話すことも身体を動かすことも満足にできない。けれどみおにとっては、生まれたときからその姿である母。かわいそうとか普通ではない、とかそういうことは思わないし、むしろ父や祖母が話す昔の母や、写真やビデオのなかで笑ったり動いたりする母の姿のほうが、みおにとっては違和感がある。

 

 自分が生まれたと同時に母が植物状態になってしまって、父と祖母がずっと母が昔のようになるのを待っていて、たぶん、みおや母の状況を知ったら、たくさんの人が同情するだろうし、がんばってるね、とかつらいのに目が覚めるのを待ってるんだね、とかいくらでも美談にしてしまうと思う。けれど、そういう美談というのはこの作品において一切ない。というのも、みおが「母が普通に生きている」と思っているからだ。目を覚ますのを待っている、のではなく、母は眠っているわけではないから目は覚めている(眠るときは普通に眠る)。
 あるいは、安易な同情を寄せてきやがって、みたいな反骨精神を持つ人もいて、その言葉の数々に抗う、というような美談もどこかにはあるかもしれない。けれどやっぱり、みおにはそういうものもない。母は普通に生きていて、それは、介護をしてくれる人も、昔の母を思い出す父も、母と同じ病室で、同じような症状になってしまっている人も、同じだ。みおには余計な感情がない、というかわざわざ描かれていない。
 だからといってみおがロボットみたいな人間なわけじゃない。学校であったこと、愚痴、なんでも母に話して、母の手のひらに安心感をおぼえたりもする。過不足なく、感じていること、起こっていることをそのまま受け入れているのだ。受け入れている、という意識もたぶんない。


 設定自体は重いのだけれど、この過不足のなさが余計に重くさせないし、重く感じることはとても失礼なことに思える。いま、私たちは呼吸をしているけれど、呼吸をしている=生きている、とあらためて思うことは少ない。一見あたりまえのことだけれど、みおが母たちと過ごしてきて、見て感じたひとつひとつがこの答えにつながっていくのが本当によかった。
 なにもかも美談にならないし、そういったものをすべてなくしたような、まったくの別次元に在るのですが、たしかに美しさがある作品でした。

 

 植物は、光をあびて呼吸をして生きてゆくけれども、私たちも呼吸をして生きているよね。読み終わったあと、目を閉じてじっくり呼吸をしたら、普段なにげなくしていることのはずなのに、めちゃくちゃ身体のなかが動いているな、と不思議な気持ちになった。

 

最近のこと

 夏の終わりからいままで、少し忙しくすごしていて、気づいたらなんとなく肌寒い季節。秋はわけもなく感傷的になりますね。

 

内定をもらえた

 八月にアワワワワと転職活動をしているということを書きましたが、無事に内定をもらい、イエイイエイとなっていたのが入社日が近づくにつれ、ちゃんと仕事ができるだろうか、めちゃくちゃ性格合わない人がいたらどうしよ……と結局アワワワワとなっています。
 入社日は10月の2週目、雑誌などをつくる現職とはちょっと業種がちがいますが、ライター業につけました。なんか書いてばっかりですが、自由に書けるわけじゃないというところは、仕事です。

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引っ越しをした

 実はわたしは引っ越しがだいすき。引っ越したのしい、内見からわくわくする。高校卒業後に上京し、都内に住んでもう14、5年ほど経ちますが、いままで引っ越した回数は7回。二年ごとの更新のたびに引っ越している。逆に夫は引っ越しなんて面倒、不満がなければこのまま住み続ければいいじゃないという人なので、説得するのに苦労した。苦労したけれども、長い戦いに決着がつき、ついにこないだ引っ越しました。
 9月18日が引っ越し日だったのですが、おもいきり台風。都内は降ったりやんだりよくわからない感じで、業者さんがきたときはちょうどやんだのでこれはラッキー、さっさと新居に行くぞと荷物を運び出した瞬間にびっくりするくらいの土砂降り、タクシーを呼べるというアプリをつかってもまったくつかまらず、なんかの武器かというくらいの強い雨に打たれながら移動した。
 新居はもともと住んでいたところより15㎡くらい広くなってとても快適。

 

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 文芸誌を入れる棚をひとつ持ってきたので、本棚に余裕ができて、まだまだ増やせるのがうれしい。これをしたくて引っ越しをしたところありますが、価値観が違う夫には呆れられそうなのでこの理由はひみつです。
 並びはそんなに変わってないけど以前の本棚↓

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トークイベントに行った

 佐原ひかりさんの「人間みたいに生きている」刊行記念のトークイベントが開催されたので、渋谷の大盛堂に行きました。はじめて作家さんのイベントなるものに参加したのですがめちゃくちゃたのしい!

 作品についてのあれやこれ、参加者からの質問など盛りだくさんの内容を話されていました。なかでも心だけでなく身体にも多様性があり、ひとりひとり違う個体であること、だれかを自分の味方にしようとするより、まず自分が自分の味方にならないとうまくいかないこと、人間は決して一面的ではないというお話が印象的です。

「人間みたいに生きている」は、「食べ物」に対して気持ち悪さをおぼえる高校生の唯と、病気で食べ物を一切食べられなくなり、吸血鬼と呼ばれ洋館でひっそり暮らす泉。善性のかたまりのような食べ物を嫌だと思ってしまう唯のくるしみは、簡単に理解できるものではないけれど、共感性よりも、見たり聞いたり知ったりしろうとして、想像することの大切さを感じる作品でした。
 あとタイトルがめちゃくちゃ好きなのですよね。人ごみにまぎれたとき「みんな人間みたいに生きているな~」と心のなかでこっそりつぶやくのが最近のマイブームです。
 サインもらいました。ブイ!

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 そしてトークイベントの前に、いつもなかよくしてもらっているフォロワーさんに会うなどしました。
 お話しするのめちゃくちゃ楽しかったよ~~~~~~~本の話ができる人ってまわりにあまりいなくないですか?(読書の趣味が合うとなるとさらに……Twitterにはいっぱいいるのに……)
 最近読んだ本や、賞などのお話、普段なかなかできないことをたくさん口にできてとても満ち足りた時間でした。ありがとうございました。
 そのときトラウマになった本の話が出たのですが、あとあと自分が読んで具合が悪くなった本を思い出してみたら二冊ありました。
 金原ひとみさん「アッシュベイビー」、吉村萬壱さん「ハリガネムシ」はなかなか読み返せずにいる本です。衝撃的な描写が多すぎて不調をきたします。
 あと、金原ひとみさんといえば「ハイドラ」もトラウマというほどではないにしろ強烈でした。これは具合が悪くなったというより、ごはんを食べるのが嫌になりました。これはモデル体型を維持するために拒食する女性の話で、思春期のころに読んだとき、めちゃくちゃ影響を受けました。家族には心配されたけど、食べなければやせられる、の強迫観念やばかった気がする。でも私は基本的に食べるのが好きです。

 

 秋の、色がうすくなるような空気感が好きです。引っ越したばかりで「ちゃんと」「丁寧に」生活しようという意識が現在(だけ)高まっているので、衣替えをしようと思います。

 

 

無垢なる花たちのためのユートピア/川野芽生

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 今年はまだ三か月も残っていますが、読んだ瞬間に私の今年のベスト3に入った小説がありました。感想をうまく書けるか自信がなかったのでブログでは紹介してこなかったのですが、やっぱり多くの人に読んでほしいという気持ちが日に日に増していくので、書く!
 その名も川野芽生さんの「無垢なる花たちのためのユートピア」です!

無垢なる花たちのためのユートピア

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地上からはるか遠く離れたところにあるという楽園を目指し、天空を旅する一隻の船。
そこでは花の名前をつけられた少年たちが、導師と呼ばれる大人たちのもとで寮生活を送っていた。最も大切なのは心の純潔さであると教えられた少年たちの暮らしは慎ましく清らかで、船の中はこの世界のどこよりも楽園に近い場所と思われた。
ある日、白菫という少年が舷から墜落する。皆が不慮の事故としてその死を悼んだが、親友の矢車菊は白菫が落ちる直前の様子を知り、彼がみずから身を投げたのではないかと疑問を持つ。だが、希望に満ち溢れたこの美しい船に、いったいどんな不幸があるというのか――親友の死のほんとうの理由を探して、矢車菊は船内の暗い場所へと足を踏み入れる。幻想文学の新鋭による初の小説集。

 

 歌人でもある川野芽生さんの短編集。まずどこを読んでも言葉がうつくしすぎる。冒頭を引用しますと、

 真っ逆様に堕ちてゆくとき、天使はもっともうつくしく見えるのかもしれない。

 

 白菫がまだ生きていたころ、授業や食事や礼拝の時間も忘れてどこかで物思いに耽っているこの親友を探しに行くのは矢車菊の役目だった。ひとけのない聖堂でベンチに寝転がり、窓から差し込む光を見上げていることもあれば、だれもいない教室で机に腰掛け、足をぶらぶらさせながら窓の外を眺めていることもあり、廻廊の出窓の凹みに細い躰を収めて、窓硝子に頬を寄せていることもあった。
(川野芽生「無垢なる花たちのためのユートピア」/東京創元社 7頁)

 二段落目、この長さで二文しかない。一文が長いと読みづらさを感じることがあると思うのですが、全然そんなのない……。むしろするっと情景が浮かぶ。白菫(しろすみれ)と名付けられた少年が、うつくしい景色のなかで寝転んだり物老いに耽っている姿を思い描くことができます。私はもうこの冒頭を読んだだけで倒れそうになりました。うつくしい文章、大好きです。
 白菫、矢車菊(やぐるまぎく)など、「無垢なる花たちのためのユートピア」に出てくる少年たちには花の名前がつけられている。ほかにも銀盃花(ぎんぱいか)、蛇苺(へびいちご)、冬薔薇(ふゆそうび)、忍冬(すいかずら)……。どうですか? 私はここに書き写しただけで泣いてます。だってうつくしすぎるから……。


 しかしこの作品のよさは、「うつくしいだけではない」というところ。むしろ、うつくしい…とうっとりするための内容ではないのです。うっとしていると、こてんぱんにやられます。物語の構造にぶん殴られます。私は読んでいるときに、市川春子さんの「宝石の国」を思い出したりしていたのですが、人間にとってうつくしいものって、ただ「うつくしい」と思われるためだけに存在しているような気がする。それは身勝手につくりあげたうつくしさだから、その裏側にあるものや、存在までの過程や、「うつくしさ」そのものの考えなんかを突きつけられると、もうどうしていいかわからなくなる。ただ矢車菊や冬薔薇が苦しくないように願うしかできなくなってしまう……。

 

 親友である白菫が突然自死し、その理由をさぐっていく白菫。ある日「毒草」という名前が与えられた少年のもとへたどり着く。毒草は、もとから毒草という名前だったわけではなく、矢車菊たちのような花の名前がついていたが、あることによって名前を失ってしまった。純真で無垢な少年たちは、だれかを疑うことはしない。けれど矢車菊は、毒草と話しているうちに、やがてある事実に辿り着く。
 最後まで読んだとき、もう一度冒頭の一文を読み返すと、本当に苦しくなる。堕ちてゆく、と、もっともうつくしい天使。一見正反対に思える言葉で、たしかに正反対と思う感性は正しいのだと思う。だけど読み終わったあとは、この一文に矛盾などひとつもなく、まったくそのとおりだと思えてしまう。うつくしくなくていいから、ここにいてほしかった。切ないやらどうしようもないやら抱きしめたいやら、きっといろんな感情が渦巻くはずです!

 

人形街

 六篇の短編からなる「無垢なる花たちのためのユートピア」ですが、もう一篇、とくに好きだったのが「人形街」という作品です(六篇どれも本当によいです)。以下、「人形街」の冒頭。

 検疫隊が踏み込んだとき、街に生きた人間の気配はなく、死んだ人間の気配もなかった。物音一つしない大通りに、しかし数多の人影は溢れ返りつつ、微動だにしなかった。近付いてみて、街が死よりも静まり返っているわけを彼らは知った。人影と見えたものは命を持たない人形だった。
(川野芽生「無垢なる花たちのためのユートピア」/東京創元社 135頁)

「恐ろしいほど精巧」な人形たちがその街にはいた。市場で物を売り買いしていたり、父親の手を振り払って走り出すところだったり。人形の手にある林檎は腐りきっている。遺伝病により一斉に人間から人形になってしまった住人たちの成れの果てである。ただそのなかに一人だけ、生き残りの少女がいた。「ほとんど畏怖を抱」くような美貌を持つ少女は、隣市の司祭のもとへ預けられ……という話。
 容姿も心もうつくしい少女に司祭は惹かれてゆくが、狂気じみた考えに侵されていってしまう。少女はただ一人、人間として生き残ったから、悲劇のなかの幸いのことのように思う。けれど人間として生き残ってしまったから、傷いたりだれかを憎んだりしてしまう。そんな少女の心を「うつくしい」と言うのは簡単だけれど、そんな言葉で片づけていいことではないはずだ。

 どこに行けば人形になれるだろう。どうすれば心を持たないままでいられるだろう。怨むことも憎むことも知らずにいられるだろう。どうすればきれいなままでいられるだろう。どうすれば人間にならずにいられるだろう。
 泣いてはだめ。泣いたら人間になってしまう。動いたら人間になってしまう。見られるためだけの眼でものを見たら、朱いだけの唇で喋ったら、細いだけの足で歩いたら、からっぽなだけの心で考えたら、お人形には、二度と、戻れなくなってしまう。
(川野芽生「無垢なる花たちのためのユートピア」/東京創元社 150頁)

 泣きたくなる。

 幻想小説などお好きな方ならぜったいに好きだと思います! そしてうつくしさと表裏一体にあるきたなさ、ずるさ、そういったものが好きな方も…!(私は大好きです)

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今まで読んだ漫画に出てきた情緒を狂わせてくる男子

 記事のタイトルがもう。そういうわけでとつぜん本題に入るけれど、今まで読んできた漫画に出てきた、どうしようもなく夢中になってしまった男性キャラクターをまとめてみた。思い返せばリアコの数々(すぐだれかを好きになってしまう)、絶対に面と向かって会うことはできぬ魅力的な男たちに、さんざん情緒を狂わされてきた。
 最初に断っておくけれど、これは私の、私による、私のための記事である! ではゆくぞ~!! ジャンルはごちゃごちゃ!順不同!

 

片山渚(にがくてあまい小林ユミヲ

にがくてあまい 1 | マッグガーデン

容姿端麗、仕事はバリバリ。上司の信頼厚く、後輩からも慕われるアラサー女・マキ。一方、男色家である事実を隠し、男子校で教師を務めるイケメン男・渚。出会うべくして出会った2人!?の奇妙な同棲がスタート。
“食”をテーマに、男に恵まれない女と女に興味のない男、正反対の生き方をする2人の奇想天外な同居生活を描く、食ライフラブコメディ!

にがくてあまい」を知ってる人いますか!? いたら友達になって……。これに出てくる片山渚という男があまりにも好きすぎてつらかった。ゲイである渚とマキというアラサー独身女の奇妙な同居生活。渚はとにかく料理が上手、野菜が大好きでとても健康的。一話ごとレシピが出てくるのですがどれもおいしそう。渚の顔や体形がもろにドタイプ、喉仏の描き方が最高すぎる。あととてもいい具合にS。マキに対して厳しいのですが、好みの男の子にはやさしくしちゃうんですよ。そして「高校教師」なんですよ。高校教師って……正直に申し上げますと私は「先生」というのに弱いのであります。「先生」という職業だけで私はもう駄目なのであります。マキの渚をみる目には思いきり共感したり、ときどき切なかったり。恋愛には発展しない二人の不器用な、ときどきはらはらする、でも心があったまる生活、おいしい×ハートフルな漫画ですおすすめ。
 LINEマンガとかで読めるっぽいからとりあえず一話だけでもぜひ……いやばばっちが出てくるところまでぜひ……そして最終回までぜひ……

manga.line.me

 

山下一真(初めて恋をした日に読む話/持田あき)

作品紹介 初めて恋をした日に読む話 集英社 Cookie

春見順子(31)は、高校時代までは男勝りのバリバリ優等生だったが、東大に落ちてからは、その後の就職活動も失敗し、母親とはギスギス。無理やり塾に入れられそうな不良の男の子に自分を重ねて、彼をかばったことで塾もクビになりそうになるが!?

 山下先生しか勝たないが!!!!!!!??????????????? だから!!!私は!!!!「先生」が!!!!!!!!!!好きなんですよ!!!!!!! そして私をことごとく狂わせてくる「当て馬」属性の山下先生……そのやる気なさそうなのにするどい視線も、ゆったりした服装も好き……。基本的にやる気なさそうな塩顔がドタイプなんですね私は(山下先生は塩より濃い感じがするけど)。普段やる気なさそうなのにときどき目をひらく人いるじゃないですか、オー…ノックアウト……。まだ途中までしか読めていなくて完結したら一気に読もうと思っているんですが、山下先生ルートはさすがにないですよね……? 表紙ぜんぶ由利くんとだもんね…。つら……。私は当て馬の幸せを心から願うと同時にヒロイン以外と結ばれる未来を望んでいない厄介な女。山下先生が順子と結ばれないなら今後一生独身でいてください。

 

馬村大輝(ひるなかの流星やまもり三香

ひるなかの流星 1/やまもり 三香 | 集英社コミック公式 S-MANGA

幼い頃に見た、真昼の空の流れ星。夢だったのか、それとも私の道しるべなのか──。
すずめは田舎に暮らす女の子。親の転勤で、東京の高校に転入することになりました。上京初日、慣れない東京で迷子になったすずめが出会ったのは…? 恋も友情も全てが未知の新生活が始まります!

「先生」が好きだと思っただろ……? この作品にいたってはNO!「先生」を越した元当て馬男子、ビクトリー当て馬男子、馬村……馬村のことを思うともういてもたってもいられなくなるよ……。馬村はいつもやさしい…あとシャイなところ最高か…? さんざん傷ついてきた不器用な馬村、私はもうみていられなくて実は途中で読むのをやめました。しかし結末を教えてもらい(この際ネタバレとかどうでもいい)、報われることの尊さを実感しました。今は結末を知っているから途中の馬村をみても「大丈夫、あと少しの辛抱だから…!」と心を強く持てますが、これ獅子尾との結末だったら私は絶対血反吐はいてたしトラウマレベル。馬だけに(ごめんなさい)。それにしても昔読んだときは「獅子尾先生」にときめいていたはずなんですが、大人になって読むと、「おいおい生徒とそんな軽率に……大人だろうが!冷静になれ!まわりをみろ!」と妙な親目線の感想がうまれてしまうので、やっぱり馬村がビクトリーしてよかったです。

 

玄奘三蔵最遊記峰倉かずや

一迅社WEB | インフォメーションポータル | 書籍情報 | 最遊記 (1)

天地乱る混沌の時代、人と妖怪が共存する“桃源郷”で突如妖怪が暴走し、人間を襲い始める。地獄絵図と化した桃源郷の異変を止めるため、超鬼畜生臭坊主・玄奘三蔵は、元気な小猿・孫悟空、すっとぼけお兄さん・猪八戒、エロ河童・沙悟浄とともに西を目指す。西遊記をモチーフに魅力的なキャラクターが活躍するスタイリッシュアクションの開幕!!

 いまにしてみれば、出会ったのが小学生~中学生のころでよかったと思う。あと田舎に住んでいてよかった。もし高校生とか20歳とか、なんとなく自分で自由に使えるお金があったり、いろんな情報やグッズが手に入る大都会に住んでいたら、私は取り返しのつかないことになっていた。断言する。取り返しのつかないことになっていた。言葉は不要である、あまりにかっこよすぎなんである……四人ともかっこいいけど、とにかく玄奘三蔵である……。お坊さんなのにピストル撃ちまくるってなに? なんで煙草すってんの? なんですぐ上着脱ぐの? 上着? 袈裟? とにかく色気がやばすぎる。私いまは禁煙に成功しているのですが、煙草吸い始めたきっかけは少なからず玄奘三蔵にあった気がするんですが。精神と健康に多大なる影響を与えてきた男……。シリーズいっぱい出ているけれど、私が読んだのは完全に初期のころ、大人になったいまこそ全シリーズ制覇したいのですが、「取り返し」が……あと半年くらい休みないと現実に戻れなくなりそうなので、読むタイミングがわからない。死ぬまでには読みたいです。

 

田代勇介(ご近所物語矢沢あい

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デザイナーを目指して矢澤芸術学院(通称ヤザガク)に通う実果子。お隣さんのツトムとは、生まれてからずっと一緒の幼なじみ。ヤザガクに入り、ひとりで新しい世界を広げていくツトムに、実果子は淋しさを隠せなくて…? 

 エ―――――――――――――ン勇介のことを思うと今でも胸が苦しいよ~~~~~~~~思えば勇介はヤザガクの面々のなかで「フツウ」ですよね。だからバディ子と惹かれ合ったわけですよね、でも「フツウ」であるからこそ「フツウ」のかっこよさを教えてくれたのが勇介な気がするんですよ。ちょっとなに言ってるのか自分でもわからないんですが、ものすごいキラキラした魅力があるわけじゃなくて、どちらかというと「しょうもない」男なんですよ勇介は。でもその「しょうもない」に魅力を感じてしまったわけで、勇介は私の新しい扉をひらいてしまったのです。しょうもなさというかっこ悪さ、それゆえ気づくかっこよさ。あ~~~~~~~~なぜバディ子と一緒にならなかったのだ……いや、そこはやっぱり矢沢あい先生と認めざるを得ないのですが、歩と結婚しちゃうところもさ、歩が勇介の魅力を発見できてしまうところもさ、フツウだと思っていたのになんだかんだで手の届かないところにいってしまう、ずるい男なんだよ勇介は。

 

秋山深一(LIAR GAME甲斐谷忍

LIAR GAME 1/甲斐谷忍 | 集英社 ― SHUEISHA ―

ある日突然送られてきた小包。その中には「おめでとうございます。あなたは10万分の1の確率をくぐりぬけ、ライアーゲームにエントリーされました」という手紙と、現金1億円が同封されていた。それがライアーゲームのスタートだった。30日後のゲーム終了日に、自分の所持金1億円を返還する。ルールはそれだけ。首尾よく対戦相手の所持金を奪うことのできた勝者は1億円を手にし、敗者は1億円の負債を背負う…。誰を信用すべきなのか、誰を信用してはいけないのか…。大金を前に揺れ動く、人間心理を描破した問題作!

 ドラマをみてドハマりしましてね、大人になって大人買いをしたわけなんですが、「天才詐欺師」!!!!!!??????????????? 設定天才か? いつもポーカーフェイスなのに天然のナオに振り回されたり心配したりあきれたり笑ったり……私はポーカーフェイスにおけるギャップというのをみせられたらイチコロなんですよ……普段不良やってるやつが弾けんばかりの笑みで「おもしれーやつ」とか言っちゃうのがたまらないんですよ…アキヤマさんは「おもしれー女」とか言わないけど、あきらかにおもしれー女に振り回されている男なんですよ……。あとクール頭脳系男子がふつうに好き、無双してくれ。

 

渡良瀬(デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション浅野いにお

『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』 浅野いにお | ビッグコミックBROS.NET(ビッグコミックブロス)|小学館

浅野いにお最新作。二人の少女のデストピア青春譜。

4年前の8月31日。突如 『侵略者』の巨大な『母艦』が東京へ舞い降り、この世界は終わりを迎えるかにみえた――
その後、絶望は日常へと溶け込んでゆき、大きな円盤が空に浮かぶ世界は今日も変わらず廻り続ける。
小山門出(こやまかどで)、中川凰蘭(なかがわおうらん)、2人の女子大生は終わりを迎えなかった世界で青春時代を通行中!

 正直に言うと浅野いにお先生の描く男子がだいたい好きなんですが、このデデデデに出てくる渡良瀬先生というのがですね、いいかんじにクズでしてね、そしていいかんじの塩顔でしてね……これがたまらんのですよ……。門出たちが通う高校の先生なんですが(また「先生」だよ!!!!!!)、門出は渡良瀬先生に恋をしていて、わかりやすくアピール。本貸してという門出の申し出にあっさり家までつれてきちゃう。が、手は出さない。ぎりぎりゆるされるラインというのをわかっている。ぼけっとした顔しておそろしい男なんである。そしてそのぎりぎりラインを示されたらこちらとしてはハマるしかないんである……。最低最悪のクズではなく、良心や理性がしっかりあるクズなのがさあ……もう……いにお先生ありがとうございました。あと「渡良瀬」って名前がもうずるい。わたらせ、ですよ。わたらせせんせい。狙ってる?
 アニメ化するそうです。超楽しみです。

dededede.jp

 

羽山秋人(こどものおもちゃ小花美穂

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TVやCMで活躍中の紗南は、超元気な小学6年生。そんな紗南を悩ませているのは、クラスで起きている“先生いびり”。仕切っているのは羽山秋人…悪魔のよーなヤツ! 見て見ぬフリだった紗南も、ついに怒りが爆発して!?

 この世に羽山を生み出してくれてありがとうございました。私はですね、闇をかかえている男子も好きでしてね、ヒロインや仲間と一緒にその闇が払っていく過程が大好きでしてね……小森を迎えにいくところとかもう…オエッ(嗚咽)。表情が乏しいやつがまれにみせるほほえみとかたまらんのよ……。あとずっと名字で呼んでいたのに「サナ」と名前を呼んだりとかね…その瞬間はたまらないよね……。怪獣に小さいマフラーつけるのなに? かっこよくてかわいいってなに?

 

大谷敦士(ラブ★コン中原アヤ

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必要以上にデカい女・小泉リサと、必要以上にちっこい男・大谷敦士。2人には"オール阪神・巨人"なんてコンビ名までついてる。だけど、本当のリサは恋に悩むフツーのコで......!?

 私の青春でした大谷は。あの花火大会の日の屋上の場面、みんなおぼえてるよね!!!!!!?????????? 思い出すだけでにやにやしてしまう。普段ふざけあっているというのに、なんか全然そういうことに興味なさそうだったのに、なんで突然キスとかしちゃうの……。自転車にのりながら小泉への恋心を自覚したときのやきもちとか……なんなんだよ…どうしたらそんなことになるの……私はどうしたら大谷に会えたんですかね……。中原アヤ先生の作品では「ダメな私に恋してください」の黒沢主任にもやられちゃいましたよ……。なんなんですかね…。いきなり恋心を自覚してからの積極性に、どうしてこんなにときめいちゃうんですかね…ダメ恋はRも最高でしたよ……。

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小宮山ヨウ(高校デビュー河原和音

高校デビュー : 作品情報 | 別マメモリーズ | 別冊マーガレット

 

バリバリの部活少女だった晴菜は、高校では恋にすべてを賭けようときめていた。が、いくら頑張っても、まるで彼氏ができない。そんな時、目の前に"男ウケ"をよく知る男の子が現れて...!?

 大谷に並び、ヨウも私の青春でした。「先輩」ね……。「先輩」のよさをこの漫画で知りました。もうどうにでもしてくれよ……。私が好きなのはやはり晴菜の誕生日ですよね。少女漫画を一生懸命研究し、晴菜が喜びそうなことを計画し、ナイター行ったあとの薔薇って…好きなところ言うって…あのヨウがですよ……。いつもスマートで恥ずかしいこととかやらないくせに、晴菜のために……。もうむり。すみません私はいま、自分で記事を書きながらすでに情緒を狂わされており、力が尽きそう……。でも、3大私の情緒を狂わせた男がまだいるから……。ちなみに河原和音先生の作品の「素敵な彼氏」というのもこれまた最高にいいのでぜひ読んでください。

www.s-manga.net

 

赤星栄治(CRAZY FOR YOU/椎名軽穂

CRAZY FOR YOU 1/椎名 軽穂 | 集英社コミック公式 S-MANGA

 

女子高育ちの天然おとぼけキャラの幸は、初めて参加した合コンでユキちゃんという男の子と出会い、ついに彼氏いない歴17年にピリオドが!? ノンストップ・ラブ・エモーション。

 赤星くんだよ!!!!!!!!!!!!!3大私の情緒を狂わせた男の一人です。もう、赤星くんのことを考えるだけで日常生活がままらなかった。私にはたしかに赤星くん以外のことを考えられない時期というのがあった。この男はとにかくやばい。ヒーローであるユキの友人なんだけれども、お察しのとおり当て馬である……。当て馬のくせに、いや当て馬だから、めちゃくちゃ主人公サチのことを好きになっちゃうのである……。しかも本気でサチのことを自分が幸せにすると思っているのである……。いったい何度「なんで赤星くんと付き合わないの?」と思ったことか。なんで赤星くんと付き合わないの…? 赤星くんは普段ちゃらちゃらしてるのに好きになったら超一途だよ、それもちゃらちゃら軽薄な言葉は口にせず、ここぞというときだけ包み込んでくれるんだよ……。赤星くんの幸せを私は願っていた。願っていたけど、サチ以外の女と幸せになっているという事実をまだ受け入れられず、「運命の人」はいまだに読めない。死ぬまでに見届けられたらいいなと思っている(重い)。

 

相馬蛍(ラストゲーム天乃忍

ラストゲーム 1|白泉社

小学生の柳は超完璧少年だったが、転校生・九条が現れ、勉強・運動で惨敗! 柳は人生初の挫折を経験し、九条への雪辱を誓う。同じ中学、高校に進学する中、「惚れた方が負け」という言葉を耳にし、柳は九条を惚れさせようと決意する。十年に渡る二人の勝負(ラストゲーム)が、今始まる!! 

 蛍くんだよ!!!!!!!!!!!!!3大私の情緒を狂わせた男の二人目です。もうむりです。蛍くんほどの完成された当て馬男子ほかにいますか? 蛍くんと九条が会話をする場面ひとつひとつ思い出すだけで胸がつらくなってくるのですが。蛍くんはもはや九条と出会わないほうがよかったんじゃないかと、多くの人を敵に回しそうな発言をしそうになるほど、あまりにも当て馬すぎるのである……。それでも九条たちと出会えたことは蛍くんの成長につながっているとわかっているけれども、恋愛がすべてじゃないってわかっているけれども(少女漫画でこれを言うのもあれだが)、でも、あまりにも報われなさすぎである……。赤星くんの場合、本気で自分がサチを幸せにできると思っているんだけど、蛍くんはちょっとちがう。いや、九条を幸せにしたいとは思ってるんだけど、「幸せにできる」とは思っていないのだきっと。だって「九条と柳」の二人につけいる隙が一ミリもないから…。もっと早く出会っていれば…とかも蛍くんの場合は厳しいのである。だって九条と柳は小学生のころからの仲だし親公認だしどう考えたって両想いだし、なんで蛍くん九条のこと好きになっちゃったの……? 蛍くんにいたっては、もしスピンオフとか続編とか出るなら読みます…本当はいやだけど(重い)。

 

草摩夾(フルーツバスケット高屋奈月

フルーツバスケット|白泉社

 

テントで暮らす女子高生・透(とおる)。家事の腕を買われ草摩由希(そうまゆき)の家で暮らすことに。だが、草摩家には異性にふれると動物に変身してしまうという秘密が―。

 もはや説明はいらぬ……私の一生の推しは草摩夾である。もうなにもかもが完璧である。不愛想なのにときたまみせるほほえみ…抱えている闇…恋心を自覚した瞬間からの行動……不器用…満を持しての「透」呼び……意外としっかり者……おかゆ作ってくれる……読んだらやさしく振り返ってくれる…ときどき照れる……いてほしいときに現れて立ち上がらせてくれる…迎えに来てくれる…透のことになるとときどき我を忘れてしまう…二人で砂山つくる…元気がないのすぐ気づいてくれる…泣いてるときにそばにいてくれる…よくからかってくる……もうむりです。優勝です。夾くんと似たような服装をしている男子がいればそれだけで好きになる勢いだったし(カーゴパンツ)、夾くんのように“秘密”を抱えている男の子に出会うことがあればすべて受け入れる覚悟を決めていました。めちゃくちゃシミュレーションをしたりなどですね、つまり男の子が秘密を打ち明けてくれる→私のあなたに対しての気持ちは変わらないよと誠実に伝えるというシミュレーションをですね、ことあるごとにしていたのですが、いったいどこにいるんですかそんな男の子は……。“猫憑き”でも受け入れる覚悟はとうにできてるんだが…?

  それにしても私は何度フルバの話をすれば気がすむのだろう。そろそろこのブログ内のカテゴリに「フルーツバスケット」を加えたほうがいい。

 

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蹴りたい背中/綿矢りさ


 クラスで浮いた存在にはなりたくないけれど、くだらない慣れ合いはしたくない。侮られたくない。見下したい。わかった気でいたい。わかられたくない。

 学生のころ感じていたことを驚くほどの高解像度で思い出してしまうのが綿矢りささんの「蹴りたい背中」です。もはや説明不要の名作で、「い、いまさら感想を!?」という感じもありますが、いつ読んでも何度読んでもいいものはいい。

www.kawade.co.jp

 

 さびしさは鳴る。

 読んでいなくてもこの一文は知っている、という人も多いでしょう、あまりに有名な冒頭ですが、この「さびしさ」は余りものにされたさびしさ。

さびしさは鳴る。耳が痛くなるほど高く澄んだ鈴の音で鳴り響いて、胸を締めつけるから、せめて周りには聞こえないように、私はプリントを千切る。

綿矢りさ蹴りたい背中」7頁/河出文庫

 とにかくまず冒頭が完璧すぎる……。あらためて考えるとすごくないですか、文章で胸がどきどきするの。何度読んでも完成度というか表現力の高さに驚く。さびしは鳴る、という衝撃的な一文からまったく浮くことなく、つまりどういうことなのかをきれいに描写。ハツの性格を思うと、「胸を締めつけるから」というのがまたいいんですよね。

 

 冒頭の場面は授業中のこと。高校生のハツは突然のグループ分けを命じられて余りものになってしまう。そのさびしさを悟られないようプリントを千切っているのだ。

 すごく身に覚えがありませんか、ないですか、私はめちゃくちゃあります。あのときの感覚を思い出して身体がすり減りそうになる。「蹴りたい背中」は、そんな「身に覚えがある」の連続。この装画も大好きで、その昔私は“ぽい”ベンチをみつけては両腕を少しうしろに置いて意味もなく座り視線をはずし周囲の景色をなんとなく眺めるという行為をしていたのであります(早口)。

 

 騒がしくおしゃべりするクラスメイト、顧問に甘えて練習をじょうずにサボろうとする陸上部員、まわりに合わせて空気を読んでくだらないことで笑う「なかよしグループ」。全部くだらないな、と斜に構えるポーズを確立させようとする自分。ハッ。ていうこのスタンス。

 余りものになるのはいやだけど、グループになるのもいやなハツ。中学のころからの友人、絹代と行動をともにしようとするが、絹代は新しい友人グループを形成してしまう。絹代に誘われてもグループになじもうとせず、中途半端な立ち位置にいるから、授業中の突然のグループ分けで余ってしまう。

 そしてハツと同じく余りものになったのがクラスの男子、にな川。プリント千切りで時間を埋めていたハツに対し、にな川はバリバリの女性ファッショ誌を堂々とひろげている。それをみて、「負けたな」と思うハツ。同じ余りもの同士でも、にな川はハツよりも変わっているし、しっかり「余りもの」だ。

 にな川はオリチャンというモデルのファンで、オリチャンのことになると我を失いがち。中学生のころハツがたまたまオリチャンを見かけたことがある、と言ったことでにな川とハツの距離がなんとなく縮まっていく。

 距離が縮まるといっても、にな川はオリチャンにしか興味がない。ハツもにな川に惹かれているというわけではない(むしろにな川が集めた&制作したオリチャングッズをみてわりと引いている)。二人の距離はちょっと奇妙だ。

 ハツはにな川に興味を持つけれど、にな川はハツ自身に興味を持たない。いつだってオリチャンありきの関係性になっている。

 

 ハツからみたにな川は、すこしまぶしい。きらきら輝いているわけではないのに(むしろじめじめしている)、オリチャンという芯が一本通っているからか、くだらないと吐き捨てたくなるクラスメイトや部員とはどこか違ってみえる。そんなにな川に認められたい、自分をみてほしいと思う心理は痛いほどわかる。ええ痛いほど……。

 

 にな川は、ハツに興味がないのに、あっさりとハツを見破る。低俗な会話をしたくないから、一人でいるのは「人を選んでいる」とハツがにな川に説明する場面がある。

「で、私、人間の趣味いい方だから、幼稚な人としゃべるのはつらい。」

「“人間の趣味がいい”って、最高に悪趣味じゃない?」

 鼻声で屈託なく言われて、むっとなる。

「でもおれ分かるな、そういうの。というか、そういうことを言ってしまう気持ちが分かる。ような気がする。」

綿矢りさ蹴りたい背中」124頁/河出文庫

 にな川の言葉は求めていたものではなかったけれど、「不思議に心が落ち着いた」ハツ。だれも自分をわかってくれない、そんな気持ちを溜め込んでいるときに「わかる」と言葉をくれるのは、どんな種類の同意でも心強いことなのかもしれない。

 けれどそんなにな川に対して、ハツは「痛めつけたい」「かわいそうになってほしい」と考えるようになっていく。これはにな川を嫌いとか憎いとか思っているからじゃなく、ただ「認められたい」「自分をみてほしい」の延長にある感情だ。

 にな川のことを知っていたい、にな川に頼られたい。それは自分の存在を確立することにつながるのだと思う。だれかに必要とされたい、ほかでもない自分が必要とされたい、さびしさが鳴らないくらいに、「だれか」に埋め尽くされたいと、昔私は思っていた。

 

 自分が見下していたはずのクラスメイトたちが、本当は自分よりもいろいろなことを考えてくれていたのかもしれないと気づいてしまったときの恥ずかしさ、侮っていた教師が自分をみてくれていたことを知ったときの安堵感と情けなさ。そんな感情におそわれて逃げ出したくなった先にあったのが、にな川の背中だったのだと思う。

  

 学生のころのことを思い出すなんて書いているけど、いまだって、だれかに必要とされたい、認められたいという気持ちを抱いて私は生きている。

 にな川や、にな川の背中みたいな存在は、私にあっただろうか、もうあんまり思い出せないけれど、きっと私もなにかを蹴っていた。そしてこの先も、気づかれないように、だけど「強い気持ち」で、なにかを蹴りたくなることは、きっとずっとあるんだろう。

 

 それにしても、あらためて「蹴りたい背中」を調べてみたら、単行本127万部、文庫32万部突破*1と書いてあってギョエー!となっている。いま、10万部売れたと聞くだけですごいとなるのに……。今後も本がたくさん売れたらいいなあと思います。

 

*1:共に河出書房新社のページより。2022年9月現在

映画「さがす」を観た(あきらかに有料コンテンツ)

 先日アマプラで映画「さがす」を観たのですが、10日以上経った今でも、ふと映像が頭に流れてきて離れない。とにかく強烈な映画だった。映画を観た夜はクソヤバな殺人鬼に追われ部屋に追い詰められ窓の外からじっと見つめられいつ殺してやろうか…?みたいな視線を向けられ恐怖を煽られるという夢をみてしまった。こわすぎるわあほんだらァ……。

sagasu-movie.asmik-ace.co.jp

「岬の兄妹」の片山慎三監督が佐藤二朗を主演に迎え、姿を消した父親と、必死に父を捜す娘の姿を描いたヒューマンサスペンス。大阪の下町に暮らす原田智と中学生の娘・楓。「指名手配中の連続殺人犯見たんや。捕まえたら300万もらえるで」と言う智の言葉を、楓はいつもの冗談だと聞き流していた。しかし、その翌朝、智が忽然と姿を消す。警察からも「大人の失踪は結末が決まっている」と相手にされない中、必死に父親の行方を捜す楓。やがて、とある日雇い現場の作業員に父の名前を見つけた楓だったが、その人物は父とは違う、まったく知らない若い男だった。失意に沈む中、無造作に貼りだされていた連続殺人犯の指名手配チラシが目に入った楓。そこには、日雇い現場で出会った、あの若い男の顔があった。智役を佐藤が、「湯を沸かすほどの熱い愛」「空白」の伊東蒼が楓役を演じるほか、清水尋也、森田望智らが顔をそろえる。
映画.comより)

 

 指名手配犯を見かけた、そいつを捕まえたら300万円をもらえる、という言葉を残し突然消えてしまった父親。その父親をさがす娘がたどり着いた先に、その指名手配犯の影が浮かび、さがしているのは父親なのか指名手配犯なのか……とどんどん謎につつまれ、そして謎が解明されていくという内容。


 とにかく出演者全員まじで演技がやばすぎる。父親役である佐藤二朗さんの醸し出す小汚さ、憎めなさ、必死さ、哀れさ、切なさ……すべての感情を詰め込みまくっているのにそれを隠している、観ているほうはそのことがめちゃくちゃに伝わってくる。まったく目が離せない。言葉を発せず、表情と動きで感情を表す場面があるのですがすごすぎた。言葉のない演技がまじでうますぎる。
 娘役の伊東蒼さん、しようがない父親に怒りつつも憎めない娘の言動や表情がめちゃくちゃ自然。あと物事に突進していくパワーもすごい。びりびりくるものがある。わざとらしさがまったくない。
 そして指名手配犯を演じる清水尋也さん、やばすぎる。この役はSNS希死念慮のある人をさがし、望み通り殺していくという人物像で、常人には理解できない(したくない)やばすぎる男なのですが、やばさの表現具合が1000%超えてました。鳥肌とまらねぇガクガクブルブル状態です。

 

 前半は父親が失踪し、娘が父親をさがす話がメインで、後半になるとなぜ父親が失踪したのか、指名手配犯との関係性はなんなのか……がわかってくるのですが、謎があきらかになるにつれ、しんどいのパラメータがどんどん上がって最終的に壊れる。というのもすでに亡くなっている母親(妻)がこの父娘にはいるのですが、この母親が、あの、あわわわわ、重大なネタバレになるのでもうこれ以上は言えねぇ……。ていうか少しでも内容言おうとするとぜんぶネタバレになるから「やばい」としか言えねぇ……。

 

 さらにメインの三人に加え、もう一人、森田望智さん演じるムクドリという女性が出てくるのですが、いちばん感情を揺さぶられたのはこのムクドリかもしれません。でもこれ以上は言えません……。

 

 指名手配犯の口ぐせに「これは明らかに有料コンテンツ」というものがあるのですが、この一言にやばさが詰め込まれていて、これを言えるということが本当に冷酷で最悪な殺人犯であることを表しているのですが、ある思想を持った人からは冷酷で最悪な殺人犯にならないこともあるかもしれなくて、そこに対する答えを、人間はもしかしたらさがしているのかもしれないよね……と思いました。でも答えにたどり着きたくはないです。知りたくないよ。

 

 結局「やばい」としか言えなかった。決して気分のいい内容ではないので、大声で「みんな観てー!!」とかは言えないのですが、大丈夫そうだったら観てください。
 現在アマプラで見放題配信中です(あきらかに有料コンテンツですが!!)私は今度「岬の兄妹」を観ることにします。

www.amazon.co.jp

転職活動アワワワワ

 たまに自分のブログを読み返すと、なんだか前書きが長いことに気づく。導入がなにかしらないと落ち着かない性分なのかもしれない。でも大抵たいしたことは書いていないので、たまにはさくっと本題を書く。転職活動中である!(すでにだらだら書いてしまった)

 

 今の会社につとめて四年半くらいたつ。いろいろとお世話になっているし、なんの経験もなく出版業界に飛び込んだ私をそれなりに成長させてくれた会社だと思う。

 紙媒体の編集やライティングを主にやってきたけれど、これからはウェブの時代だーっ!という気持ちになった(本を読むときはだんぜん紙派ではありますが)。あとは尊敬できる先輩がいなくなり、尊敬できない人だけが残り、いろんなツケをもろに食らう状態に心底つかれた。スキルアップだなんだとかっこつけた理由を履歴書に書いているものの、疲れた。これがいちばんの理由だ。もう尊敬できない人のために休日出勤したくない。あと実は「おいしいごはんが食べられますように」を読んで、押尾さんに勇気をもらったというのもある。

 

 しかし転職活動は苦手である。なんといっても履歴書とか職務経歴書をつくるのが苦手である。自己PRってなんだよ……「風邪をひくことがない」くらいしか言うことないんだが。

 転職サイトにプロフィールを入力していると、保有資格の項目があるが、普通免許以外書くことなくてアワワワワ……(しかも10年以上のペーパーだからそれもないに等しいし)。

 語学スキルとか!?!?!?!?!? ないが?!?!?!?!?! 中学生のころ英検3級とったきりだが……!?!?(アワワワワ………)

 自己PRもぱっと出てこない、資格もろくに持ってない、一生懸命働いてきたつもりだけど、なにも書くことが思い浮かばないと、自分がとてつもない役立たずに思えてくる。500文字くらいのPRも書けないくせに、なにライターなんて目指してんの? 片腹痛い。

 

 なかには、

・ブログなどを書いている人歓迎!

 という文言が募集要項に書かれている企業もある。ブログ書いているけど、これブログ書いているよと伝えてブログ見せてくださいとか言われたらどうする!? このブログ見せるの!?

 な〜にが「今日もめくるめかない日」だ? ブログ名の由来聞かれたらどうすんの? なぜ「村崎」という名前でやってるんですか? とか聞かれたらどうすんの?想像しただけでアワワワワ……………

 

 「オファーが届きました!」とか「応募歓迎です!」とかくると、あらあら(喜)となり、「それならもう内定一直線」となぜか妙に前向きな気持ちになるが、書類選考も通らないときもあるので、まったく振り回されっぱなしである……。よく就職活動を恋愛にたとえる人がいるけど、どうしても「見定められている感」がぬぐえない、こちらだって選ぶ立場なのだと思っても、「へへ…どうっすかね私…いい仕事しますけんど…」と自分が揉み手をしているイメージしか浮かばない。

 

 そもそも面接とか超緊張する……。志望動機とかめちゃくちゃシミュレーションしてるのに、案外「志望動機を聞かせてください」とは言われないよね……なんかいろいろな聞き方してくる……。

・転職をしようと思ったきっかけはなんですか?

・今後ご自身のなかでどんなふうにキャリアアップしたいとお考えですか?

・いろんな会社がありますが、弊社に応募しようと思った理由はありますか?

 もう全部「志望動機はなんですか?」にまとめてくれ。

 用意していた志望動機をちゃんと言えた! と思っても、また違う質問で、私は結局同じようなことを言ってしまっているのだ。「こいつこれしか言ってなくね?」と思われているかもしれない。

 それから「自己紹介」と「自己PR」もまとめてください。そんなに自分のこと話せないよ…「30秒から1分程度で自己紹介してください」だァ……!? ぜったい話してる時間15秒くらいだった……。

 

 しかしああだこうだ言っても転職活動中である、会社にも転職するからねと伝えたのである。しかしいつまでたっても決まらない場合、あいついつまで転職活動するのかな?とか思われる可能性もある。もうそうなったら風邪をひいて会社休みたい。アワワワワ……

 

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