今日もめくるめかない日

感想

植物少女/朝比奈秋

小説を読んでいると、ときどき、本当のことが書かれているな、と思う作品に出会う。小説は基本的にフィクションであって、なかには事実をもとにしたものもあるけれど、事実がどうとか実際に起こったことを本当と言っているのではなく、ご都合的なことがなく…

無垢なる花たちのためのユートピア/川野芽生

今年はまだ三か月も残っていますが、読んだ瞬間に私の今年のベスト3に入った小説がありました。感想をうまく書けるか自信がなかったのでブログでは紹介してこなかったのですが、やっぱり多くの人に読んでほしいという気持ちが日に日に増していくので、書く…

今まで読んだ漫画に出てきた情緒を狂わせてくる男子

記事のタイトルがもう。そういうわけでとつぜん本題に入るけれど、今まで読んできた漫画に出てきた、どうしようもなく夢中になってしまった男性キャラクターをまとめてみた。思い返せばリアコの数々(すぐだれかを好きになってしまう)、絶対に面と向かって…

蹴りたい背中/綿矢りさ

クラスで浮いた存在にはなりたくないけれど、くだらない慣れ合いはしたくない。侮られたくない。見下したい。わかった気でいたい。わかられたくない。 学生のころ感じていたことを驚くほどの高解像度で思い出してしまうのが綿矢りささんの「蹴りたい背中」で…

映画「さがす」を観た(あきらかに有料コンテンツ)

先日アマプラで映画「さがす」を観たのですが、10日以上経った今でも、ふと映像が頭に流れてきて離れない。とにかく強烈な映画だった。映画を観た夜はクソヤバな殺人鬼に追われ部屋に追い詰められ窓の外からじっと見つめられいつ殺してやろうか…?みたいな視…

SFのよみかた

今週のお題「SFといえば」 SF作品と呼ばれるものを、そういえば私はいままであまり触れてこなかった。 SFといえば、エヌ氏やエフ氏が出てくるもの、キツネが宇宙に旅だったりするもの、人類がコールドスリープを体験するもの、ロボットと人類が友情を築いた…

ほんものの(ペーパー・リリイ/佐原ひかり)

ボール紙の海に浮かぶ紙の月でも私を信じていれば本物のお月様 作り物の木と絵に描いた空でも私を信じてくれたら本物になる 映画「ペーパー・ムーン」の冒頭で流れる曲の歌詞の一部。 eiga.com 映画をあまりみてこない人生だったけれど、この「ペーパー・ム…

読んだ本(2022年上半期)

なんと梅雨が明けたらしいです(私は関東住まい)。毎日あっつい、あつすぎる。夏のはじまりはいつだって美しくきらきら輝いているイメージですが、実際外を歩いていると、まぶしいものを感じている場合じゃないよね。夏の写真とか絵とかみてるだけ、文を読…

おいしいごはんが食べられますように/高瀬隼子

職場での暗黙のルールというのはいつのまにかできている。「こうしよう」とだれかが口にしたことはないはずなのに、いろいろなことが「そういうふう」になっている。「そういうもの」だと思わなきゃいけないことになっている。 どんな職種についても思う。仕…

小説新潮5月号&6月号感想

短編は無限のちからを持っているとおもう。いや、そもそも小説自体が無限のちからを持っているといっても過言ではないのだけれど(そんなこといったら、この世の創作物すべて無限のちからを持っているはずなんだけれども)。 短編というのは、まあ短い話なの…

「鎌倉殿の13人」めっちゃおもしろくないか

大河ドラマ「鎌倉殿の13人」めっちゃおもしろくないか。ここでわざわざ言わなくても、きっといろんな人が「おもしろいよ」って思っているはずなんだけど言いたい、めっちゃおもしろい。 www.nhk.or.jp そもそもわたしはドラマを観続けるのがにがてなのだ。何…

ああ壇ノ浦(平家物語、鎌倉殿の13人のこと)

歴史にはまったく詳しくないのだけれど、なぜか唐突に、2022年は歴史を知る年にしようと思い立ったのが昨年の暮れ。しかし歴史を知るというのにも、自分がどんな分野に興味があるのかもよくわからない、あてもなく歴史歴史……歴史を所望……とかぼやいていたら…

文藝夏季号(怒り特集、あくてえ、ふるえるのこと)

怒ること 「怒り」特集 あくてえ/山下紘加 ふるえる/彩瀬まる 怒ること 最近、家でも職場でも怒る日が多かった。夫とは喧嘩が勃発し一カ月ほど膠着状態、職場では何度言ってもわかってもらえないということが続いて、ひたすらきりきり怒っていた。 怒る自…

鳩の栖/長野まゆみ

名は体をあらわす、という言葉があるけれど、どんな名であっても、どんな体であっても、「その人」が「その人」であれば、それでじゅうぶんなのだよな、というようなことを考えている。こわがりだったり、見栄っぱりだったり、少しいじわるだったり、やさし…

とてもよかった本15冊(2021年)

写真はとくに内容とは関係ないです 2021年も残すところあと二週間ほど、今年は本当にどこにも行かず、仕事をするか家で寝てるか本を読んでいるか、という感じだった。なのでここ数年のあいだでは、いちばん読書量が多い年だったように思う。そんなわけなので…

冬に読みたい小説など

十二月である! 寒いのはとても苦手だ。起きるのもつらいし寒いというだけで元気がなくなってしまう。けれど、冬に読みたくなる小説をさがしてみれば、寒さも愛しくなるのではないかと思ってまとめてみることにした。べつに夏に読んだっていいのだけれど、読…

ブレークポイント設定!デバッグスタート!(偶然の聖地/宮内悠介)

パーカーのフードを深くかぶって、伸ばしっぱなしの前髪からときおり見せる鋭い目、それじゃあ視力低下待ったなし、というくらいの真っ暗な部屋で、パソコンのモニターだけが青白く(あるいは黄緑色とかに)光っていたりして、そのモニターの前でなんかぶつ…

生むこと(夏物語/川上未映子)

昔、といってもほんの数年前まで、とくに大きな疑問も持たずに、(おそらく)まわりにいる人たちが自然にそう思ったように、「いつか子どもがほしい」と考えていた。 そういう考えは決して間違いではないだろうし、必ずではないにしろ、自然と芽生えてくる感…

分断の狭間(アンソーシャル ディスタンス/金原ひとみ)

アンソーシャル ディスタンス/金原ひとみ ストロングゼロ デバッガー コンスキエンティア ほかの作品について アンソーシャル ディスタンス テクノブレイク アンソーシャル ディスタンス/金原ひとみ この一年半、「コロナが落ち着いたら」「コロナが収束す…

うつくしい愛のはなし(緑と楯・恋シタイヨウ系/雪舟えま)

凝り固まったものを取っ払って、いろんなことを自由に考えることはむずかしい。むずかしいけれど、そういうふうになるときがたまにある。なんでもできそうな気がする無敵感、どこにでも行けそうな解放感、やかましいいろんなノイズや簡単に口にできる「正義…

尊すぎるワンチャンでウィンウィンな話(ワンルームエンジェル/はらだ)

やべー漫画に出会ってしまった。 www.shodensha.co.jp ジャンルはBLとされているけど、もし「BLだから」という理由だけで読むという選択肢をなくしているなら、もう一度読むことを検討してほしい、BLだけれども、これは人間と人間の愛のはなし、ていうか人間…

スカートと絶滅(スカートのアンソロジー/絶滅のアンソロジー)

スカートのアンソロジー 明けの明星商会(朝倉かすみ) そういうことなら(佐原ひかり) くるくる回る(北大路公子) スカート・デンタータ(藤野可織) 半身(吉川トリコ) 本校規定により(中島京子) 絶滅のアンソロジー 絶滅の誕生(東山彰良) 梁が落ち…

ラストゲームを読んだらやっぱりクソデカ感情を対処しきれなくてやばい

フルバのアニメを観て襲われたクソデカ感情(フルバのアニメを観たらクソデカ感情を対処しきれなくてやばい )をどうにかしようと読み返したのが「ラストゲーム」である。そしたら結局こっちでもクソデカ感情に飲み込まれてしまって書くことで気持ちを放出し…

フルバのアニメを観たらクソデカ感情を対処しきれなくてやばい

観た。ついにぜんぶ観た。なにを観たって、アニメ「フルーツバスケット」1st season~The finalしかない。わたしとなんやかんやで長く付き合っていただいている方は(ありがとう)「こ、こいつまたフルバの話してやがる」と思うかもしれない。でもなんと思わ…

光る小説(ムーンライト・シャドウ/吉本ばなな)

小説は、ときどき光る。まばゆく光るのではなくて、ぼんやり暗がりのなかできれいに光る。もちろんこれは比喩だけれど、でもそういう一冊が、本棚のなかにいくつかある。何度も読み返したくて、きっと簡単には手放せないものなのだろうなと思う。 そんな本の…

ペリカンに出会った日/記憶に残っている、あの日(kaze no tanbun 夕暮れの草の冠)

ペリカンが、いきなり目の前に降りてきたことがある。動物園内などではなく、そのへんの道端である。小学二年か三年くらいのことだったか、なにか小学校のイベントのために妹と二人で歩いていた。そのイベントがなんだったのか思い出せないが(どんど焼き? …

いつまでも、ずっと美しい子供(クララとお日さま/カズオ・イシグロ)

実はカズオ・イシグロの作品を読むのははじめてで、もちろん名前を知ってはいたけれど、なかなかタイミングが合わずのままできて、今回「クララとお日さま」を手に取った(すごくネタバレ含みますので未読の方はご注意ください)。 www.hayakawa-online.co.jp…

文學界2021年5月号(悪い音楽・Phantom など)

先日8月号が発売されたけれど、やっと文學界5月号を読めた……。まあ1月号とかまだ読めてないんだけど。文學界にかぎらず、さすがに毎月は買えないけれど気になる特集や好きな作家が出ていれば文芸誌を買っている(なによりコスパがよい)。 いつもたのしみな…

夫に呪術廻戦のネタバレをされてもしもバンドを組んでたらマジ即解散案件レベルな話

表題のとおりである。夫に呪術廻戦のネタバレをされて怒っているという話である。「なんだか最近流行っているらしい」という情報と、「五条悟はすごい人」という知識くらいしかないわたしが、アマプラでなにげなくアニメを観はじめたときの話である。ちなみ…

読書遍歴(2021年上半期)

なんと今日は6/30、つまり一年の半分が過ぎたということになるわけだけれども、多くの大人たちが説いている「歳を重ねるたび時間が経つのが早くなる」論、まっさか〜それ言えば大人になると思ってるんでしょあたいは信じないと決めていたのに、つい「去年よ…