今日もめくるめかない日

ときめきで倒れる(緑と楯 ロングロングデイズ 雪舟えま歌集)

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 いままでもこのブログで雪舟えまさんの作品への愛をたびたび語ってきましたが、また最高の一冊が爆誕してしまいました。

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短歌新文庫シリーズに忽然とBL歌集出現!
学生服から白髪を超えて(ロングロングデイズ)、
金太郎飴のごとく、どこを切っても愛の日々! 
表題作369首に加え、
歌集『はーはー姫が彼女の王子たちに出逢うまで』269首を併録した2部構成。
「解説」に代えて、作品世界を表現した漫画家・紀伊カンナ氏による描き下ろしイラストを収録。

 369首+269首=638首というめちゃくちゃ大ボリュームな歌集。「どこを切っても愛の日々」とはまさにそのとおりで、緑と楯の愛しく、それゆえときどき切なく、しかし幸福すぎる緑と楯ファンにはたまらない一冊でした。愛すぎる。

 緑と楯は、雪舟えまさんの小説などに登場する男の子たちなのですが、この二人を知らずともじゅうぶん楽しめると思います。実際、私が雪舟えまさんを知ったのはまさに緑と楯をうたった短歌だったのですが、緑、楯という名前が出てきて最初は?だったけれども、そんな疑問はいっさいどうでもよくなるようなときめき短歌が詰まっていて胸がたぎりました。キュン…というかもうギュンギュンするとおもいます。ときめきで倒れます。

詰め替え用を赤子のように抱きとる夜明けのスーパーよ永遠なれ

 たぶん洗濯洗剤の詰め替え用を、大事に手に取ったんだね…。詰め替え用って生活が続いていく証明だもの…大切にしたくもなるってものよ…なんか大きい詰め替え用=洗濯洗剤と思ったけどこれシャンプーの詰め替え用でもいいね…そして詰め替え用を手に取る姿をみて、この時間が永遠になってほしいと思ったしゅんかん尊……ていうか二人で夜明けのスーパーにいること自体もうやばくないですか。愛じゃん。なくなっていることに気づいて散歩がてら買い物に行ったのか、どこかへ行った帰りなのか、いろいろな妄想がはかどります、この一首だけでも!「赤子のように」という繊細な手つきをするのは楯なんじゃないかなあと思うので、わたしはこの短歌は緑視点で読んでいるけど、逆なら逆でそれもいい。

 緑と楯はいろんな作品で出てくるので、こういう性格と限定するのも違うのですが、それでもわたしのなかで緑は生真面目、楯はそれにくらべて飄々としているかんじ、愛情をわかりやすく表現するのは緑のほうで、楯はすずしくその愛情を受け取りながら、でもときどき緑に負けないくらいの愛が爆発するときがあるんだ……とかわたしは緑と楯シリーズを読みながらそんなことを考えたりなどしています。みどたてシリーズ読んでない人からしたらなに言ってんだこいつって感じだと思うのですが、気になったらぜひ読んでみて……そしてこのギュンをわかちあおう!!

交番で体操をする青いひと羽ばたきそうで君と見ていた

 

SFを読んでいたところだというその手で頭を撫でてください

 

嫌いから好きへと変われば信号に引っかかりまくるという祝福

 この他愛もない、いや愛しかないなにげない日々の二人のしゅんかんが詰まりに詰まった歌集なのですよ。こんな歌が638首も入ってるんですよ。どうですか、欲しくなりませんか……。だれかを好きになったときって、何回信号に引っかかってもゆるせる気持ちになるけど、それを緑は祝福と感じる素直さを持っているのだ……。いやこれは楯視点かもしれませんがこの歌は緑の歌のはずです。緑はこういう、素直でかわいいところがある。楯もそういう緑が大好きなのだ・・・ぎゃあ!!!!!!!愛!!!!!

 また、この歌は緑、この歌は楯……とおもう最大な理由は呼び方にあって、緑は楯のことを「きみ」と呼び、楯は緑のことを「おまえ」と呼んでいると思うのですよ。

「ひ買って」と君が書くのはひきわりの納豆買ってきてということ

 

油断すると君が重たいほうを持つ米をよこしてガーベラを持て

 

うちの糸偏いますかと君の声しておれはもう存在が挙手

 

布団の中のおまえはとても楽しげでつられて布団に入ってしまう

 

指で作ったマルにおまえを見ているよ小さいね宇宙一の宝は

 ねえわかる!!!???わかりますか!!!??緑と楯の在り方が伝わってくる!!!!!!!「りょうかい」を「り」「りょ」などと言うように、楯はひきわりの納豆を買ってきてほしいことを略して「ひ買って」と言うらしいですね、それってつまり「ひかって」……緑に対して「光って」って言ってるということ……。え?愛じゃん……。
 ガーベラの歌もまじで大好きすぎて何回も反芻しているのですが、これたぶん最初にお米持ってるの楯なんですけど、逆でもいいよね……ていうか二人ともガーベラ持ってくれわたしが米何キロでも持つよ。
 緑のことを「うちの糸偏」って!!!!!!!!!!!!なにそのたからものみたいな呼び方……と思ってたら緑のことを「宇宙一の宝」とか言っちゃう……アキくんがコンを呼び出すみたいな感じで指でマル作ってるんでしょ…(ごめんとつぜんのチェンソーマン)。楯の緑に対するいとしさあふれまくる口調もたまらないのですよね……。そして「存在が挙手」って、全身で喜んでるじゃん緑……。かわいすぎるし愛しすぎるし、そんなふうに感情を表現してくれる緑だから、楯はこの人と生きていけるんだよね……。何度も言いますが、こんな歌が638首!!!!638首もこの一冊のなかにあるのですよ。

 みどたて小説を読んでいなくてもじゅうぶん楽しめる一冊だけど、ほかの作品も読んでいれば「あっっっっこの歌はあの作品のあのシーン…!」とオタクにとって最高の楽しみ方もできるので、気になった方ぜひぜひ雪舟えまさんのほかの作品も読んでみてください。

今は、いや今世で解らずともよい俺たちには永遠があるから

 来世でも緑と楯に逢いたいですが、少なくともわたしは今ふたりに逢えてよかったと心から思う今世です。

 

mrsk-ntk.hatenablog.com

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