今日もめくるめかない日

グッドガールを応援したい/自由研究シリーズが最高のミステリ小説だった

 普段海外の小説はあまり手に取ることがないのですが、今回夢中になって読んだ作品がありました。話題作なのでご存じの方も多いと思いますが、そうです「自由研究シリーズ」です!

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 そもそもミステリ小説すら全然読まない私ですが、このシリーズはほんと、もう、めちゃくちゃおもしろくて、三部作でどれもなかなかの厚みなんですが、とにかく一気読み。すぐ読んでしまいました。続きが気になって気になってしょうがない。あと登場人物がとにかく魅力的。

一作目:自由研究には向かない殺人

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高校生のピップは自由研究で、自分の住む町で起きた17歳の少女の失踪事件を調べている。交際相手の少年が彼女を殺して、自殺したとされていた。その少年と親しかったピップは、彼が犯人だとは信じられず、無実を証明するために、自由研究を口実に関係者にインタビューする。だが、身近な人物が容疑者に浮かんできて……。ひたむきな主人公の姿が胸を打つ、傑作謎解きミステリ!解説=若林踏

 ミステリ小説の感想って、なかなか難しいですね、どこまで書いていいのやらなのですが、この主人公ピップをとにかく応援したくなる! だいたい自由研究のテーマで過去起きた事件の真相を解明するというこの設定が好きで……。ミステリ詳しくないですけど、たぶんこんな設定ないですよね?(高校生が事件を解決するというのはすごくありそう)
 ピップはあくまで高校生で、すごくしっかりした性格ではあるのですが、やっぱり子どもなので、警察のような本格的な捜査はもちろんできません。ただ、ピップだからこそできる(関係者へのインタビュー、SNSを駆使した捜査、無謀な家宅侵入!などなど)、型にとらわれない彼女だからこそ見える道筋があり、徐々に真実に近づいていく緊張感とスリルがたまらない。
 ピップは正義感がありまっすぐ、でもちょっと天然という本当に本当に愛すべき主人公。少し向こう見ずなところもありますが、そんなときは頼れる相棒がうまく舵を切ってくれたりなどする(相棒ラヴィとの掛け合いも本当にたまらないのよ~~~~)。
 そしてこれはシリーズ通してそうなのですが、インタビュー形式の掛け合いが何ページもあったり、SNSでのメッセージのやりとりの図版を見開きまるごとで使っていたり、現場の写真が載っていたり、証拠であるノートのメモが載っていたりと、図版などが多いので、分厚いなと思っても、実は文字数的にはウッ…となるような作品ではないのです。読みやすく内容を追いやすい工夫がそこかしこにあるので、あんまり長いのはちょっと…と言う方もぜひトライしてみてね。

片手で持つとけっこう重い
二作目:優等生は探偵に向かない

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高校生のピップは、友人から失踪した兄ジェイミーの行方を探してくれと依頼され、ポッドキャストで調査の進捗を配信し、リスナーから手がかりを集めることに。関係者へのインタビューやSNSも調べ、少しずつ明らかになっていく、失踪までのジェイミーの行動。やがてピップの類(たぐ)い稀(まれ)な推理が、恐るべき真相を暴きだす。『自由研究には向かない殺人』に続く傑作謎解きミステリ! 解説=阿津川辰海

「自由研究には向かない殺人」で見事事件を解決したピップは有名人(事件の概要やインタビュー音声をポッドキャストで公開しているので、フォロワーが多いのです)。そんなピップを頼って、友人が自分の兄をさがしてほしいと依頼をしてくるのですが、ここで私はさらにピップを好きになります。
 第一部で危険な目にあい、実際に身近な存在を危険な目にさらしてしまったピップは、ちゃんと自分が無力な子どもであることを承知しています。向こう見ずな性格は少し冷静になっており、理論的に自分ができることを考える。
 なんかひとつ事件を解決したら、自分は名探偵だ!みたいな気になって次々依頼をこなしていく……というのもまあエンタメですしおもしろくはあるんですが、このシリーズは全体的にピップの心情をとてつもなく丁寧に描いています。犯人探しや暗号の解明など、もちろん従来のミステリ要素はあるんですが、ピップの友人たち、被害者の家族、そして容疑者/犯人の家族に対してどこまでも真摯に向き合おうとする作風で、私はそこがとても信頼できるなと思いました。
 そしてその信頼がなければ、衝撃の三作目を真っ向から読めなかったように思います。なので、これから読もうと思っている方、できれば!できれば第一作目から読んでみてください!!!!!!!!

三作目:卒業生には向かない真実

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大学入学直前のピップに、ストーカーの仕業と思われる出来事が起きていた。無言電話に匿名のメール。敷地内に置かれた、首を切られたハト……。それらの行為が、6年前の連続殺人の被害者に起きたことと似ていると気づいたピップは、調査に乗りだす。──この真実を、誰が予想できただろう? 『自由研究には向かない殺人』から始まる、ミステリ史上最も衝撃的な三部作完結編! 解説=吉野仁

 この三作目に対して、感想を言うのはあまりにも難しすぎます(読んだ人ならこの気持ちがわかるはず……!)え、ていうかこういう展開ミステリ界ではけっこうあるんですか? 私はめちゃくちゃびっくりしました。「ミステリ史上最も衝撃的な」って本当に納得してます。
 正しいか正しくないか、ということや善悪の見極め、とても繊細で本人でしか答えが出ない「真実」が「卒業生には向かない真実」に描かれています。「自由研究には向かない殺人」「優等生は探偵に向かない」を読んでピップを応援してきたからこそ、「卒業生には向かない真実」の展開に対して真剣に考えることができました。
 解説にもあるんですが、賛否両論起こる展開。賛に手を挙げるのも、否に手を挙げるのも、どちらにしても覚悟と勇気がいります。でも私はピップの選択を応援したい。うん。応援したいと思います。最後のページ(これももう本当に!!!!!!!な終わり方なんですよ)を読んだときの気持ちは、いろんなことをすっ飛ばして、ピップのための心を持てたので。
 そして第一部で出てきた情報がまさかこの三部作目につながっているなんて!!!??? 思いもしないよね~~~いったいどこからどこまで構想を練っていたのだろう……。そして原題が「As Good As Dead」(死んだも同然)うおおおおおおおおお~~~~~い!このタイトルのやばさは読めばわかるんですよ……。一作目、二作目の原題には「Good Girl」がついているんですけど、三作目にも「Good」が入るの天才すぎない?どういうこと?すごくない?


 第一部は全体的にわくわくとした気持ちで読めるのですが、それはピップが取りかかる事件が過去のものだから(もちろん事件そのものは風化させてはいけないものですけど)。ただ、二作目、三作目はリアルタイムで事件が起こっていくので、一作目に比べて緊張感がすごいです。とくに三作目、私の心臓ほんとうにずっとばくばく鳴っていました。
 時期的にも夏休みなのでみなさまぜひ~~~~(もう少しで終わる方もいると思いますが…もっと早く感想書けばよかった)