今日もめくるめかない日

誕生日プレゼントは贈ってくれるな

 あと10日ほどで誕生日がやってくる。

 誕生日というのはわけもなくなんだかそわそわうれしくなるもの、とくに何をするわけでもないけれど、妙に待ち遠しくなってしまう。

 おめでとう、と言われて、ありがとう、と返す面映ゆさ。これでじゅうぶん、なので誕生日プレゼントは贈ってくれるな。

 

 私の誕生日は8月20日。そして夫の誕生日が8月24日。「こどものおもちゃ」の真ん中バースデーにあこがれた過去を持つのと、お祝い事はすべてひとまとめにしたほうが楽であろうという理由で、8月23日に結婚届を提出し、その日を結婚記念日とした(本当は8月22日にしようとしていたが、急に真ん中の日にしよう!と決めたものだから、書類が足りず役受理されなかった)。

 というわけで、めでたい三連発なんだけれども、私はこの数年で、誕生日プレゼントがいらないということに気がついた。

 

 誕生日プレゼントを用意してもらうのはありがたいことだとは思うけれど、いかんせん、夫とは食・ファッション・笑いのつぼ・趣味etc、ことごとく合わないので、プレゼントをもらっても、正直なところ「つ、使わない……」というものばかりだった。

 それならあらかじめ欲しいものを伝えてくればいいじゃないというスタンスになったが、そもそも欲しいものは自分で買えるし、なぜわざわざ欲しいものを言う→買ってもらうという手間を発生させなきゃならないのか謎だ。仮に値段が高くて手出しができないというものがあったとして、なおさらそんなものプレゼントされたくない。

 手間とかそういうことではない、というのはわかる。プレゼントは気持ち。そのひとのことを考えて買ったもの。贈りたい、という気持ちは尊ぶもの。とはいえ、いらないものはいらないし、いらないものをもらったから大切にしないといけないのもしんどいし、なにより自分が返さなくちゃいけないのは、たいへん面倒だ。

 

 こんなことを言ったらすごく薄情な気がするけれど、お返しは面倒。結婚なんてしているけれど、夫が欲しいものはいまいちわからないし、じゃあ私も欲しいものを聞いてみると、とくにないけど……みたいな曖昧な返事。 

 そうだ。プレゼントにしてまで欲しいものなんてとくにないのだ。それなのに誕生日だからといって律儀にプレゼントを用意する夫。誕生日プレゼントはいらないからねと言っても、ハンカチとか、「たいしたものじゃないけどプレゼントという体裁はとってますよ」感が滲み出ている贈り物を用意していたりする。ハンカチもういらないよ。10枚以上あるけど実際使うのはそのなかの3枚くらいだもの。

 そしてハンカチひとつでももらってしまえば返さなくちゃいけない気になるし、というか私の誕生日が20日で夫は24日なのだからプレゼントなんて買う暇なくね……だからいらないと言っていたのに、でも夫の意見は「いやお返しとかいらないから」。

 

 違うのだ。そちらがお返しいらないと心から思っていても、私はお返ししなくちゃいけない気になるのだ。しかもとくに欲しいと思ってなかったプレゼントに対して。でもこのプレゼントとくにいらなかったなあと面と向かって言える度胸はあまりない(よっぽどなら言う)。これはプレゼントの魔力。もらわなくてはいけない、そして返さなくてはいけないと思わせるちから。

 

 そうは言ってもプレゼントって素敵なことだと思うし、私だって子どものころの誕生日は何をもらえるのか楽しみでしかたがなかった。だからプレゼント文化を否定したいわけじゃないんだけど、誕生日だから、という理由でむりくりなにかを見繕っているのがしんどいのである。あげたい、と思ったときにあげたらいいじゃない。誕生日とかじゃなくたって。

 

 そういえば、夫の母もなにかとプレゼントをしたがる人で、それもことごとく私の趣味じゃないもので、でもいらないなんて言えずに、ありがとうございますとか言ってしまって、「使わなかったらメルカリで売っていいからね」とか言われて、いやそれ実質不用品押しつけてるだけじゃん……と思うけれども私はまたありがとうございますなんて言ってしまって、それが直接わたされるときもあれば夫経由で私のもとにやってくる場合もあって、夫経由だとお礼のメッセージを送らなきゃいけない暗黙のルールができていてウゲェーッとなるし、メッセージを忘れると、恩知らずねあの子はみたいな雰囲気が出るときもあって、もうそういうときは、ただただ絶望する。

 

 話がずれてしまったけれど、とにかくプレゼントは不要なのだ。こないだ「ペーパー・リリイ」を読んだときも思ったけれど、私も恩から自由になりたい。しかしお返しをしない自分がいると、やはり心の居心地がなんとなく悪い。むずかしいね。

 それで夫に「今年は本当に本当に本当に誕生日プレゼントはいらないから」と伝えた。前々から伝えていたけど、さらに本気な感じを出した。「そうは言っても贈らなかったら怒るんじゃないか?」くらいのことを夫はきっと思っているので、この頓珍漢野郎!と叫びたくなるのをこらえて、

「私は恩から自由になりてーんだッッ!」

 と、声を上げて言ったら、夫は、オンカラジユウニナル……?とはじめて言葉を知った原始人のような顔をしていた。伝えるってむずかしいね。

 

 でもなんだかんだで夫は納得してくれたようで、よっしゃ〜!今年の誕生日はプレゼントをもらうことはないのだ、そして私もプレゼントを用意しなくていいのだ、これで純粋に誕生日を楽しめるのだ、という晴れやかな気分。

 おめでとう、と言われたらありがとう、と返す。本当に、これだけでじゅうぶんなのだ。

 

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